トヨタ・ホンダ・マツダ・スズキ・ヤマハで認証不正が発覚! クルマの安全性には問題ないもの多数だが問題は「メーカーへの信頼」 (2/2ページ)

オーバースペックが正義とは限らない

 各社の認証不正はけっして同じものではないが、多くに共通しているのは『オーバースペックで試験をしておけばいいだろう』としたもの。たとえば、トヨタでは歩行者保護性能の試験をするのに規定値より急角度でダミーをぶつけていたり、ホンダが騒音試験において規定範囲を超えた車両重量で実施していたりするのは、そうした例になる。厳しい条件で試験することで車両の性能は確保しているといえるが、認証申請というのは規定値で試験すべきものである。オーバースペックでの試験はコンプライアンス的にはアウトであることは間違いない。

 不正のなかで残念に感じるのはマツダ・ロードスターRFが出力試験において、量産とは異なる制御プログラムで行ったという事例だ。その背景は、エンジンベンチ試験室の温度が上がってしまい走行中のエンジンルームとは異なる環境になってしまったためということだが、スポーツカーであればこそ、しっかりと対策をして正々堂々と試験をしてほしかった。同様に、レクサスRX(旧型)においてもエンジン出力試験での不正が認められたという。

 ダイハツの認証不正では、衝突試験におけるエアバッグのタイマー着火(本来の仕組みではなくエアバッグを展開させること)が問題視されたが、同様の不正はトヨタ・クラウン、マツダ・アテンザといったフラッグシップモデルにて確認されたというのは闇深い。

 マツダについてはマイナーチェンジ時にインパネ形状を変えた影響を精緻に確認したくてタイマー着火をしてしまったというが、それは実験段階までにとどめておくべきであって、その数値を型式指定の申請に使ってしまったのは、遵法精神に則る仕組みづくりができていなかったとのは残念といえる。

 ちなみに、スズキ・アルトバンにおける不正内容はABSなしモデルにおけるフェード試験の結果をごまかしたというもので、停止距離を実際より短く記載して申請していたというもの。止まる性能をごまかすというのは悪質だが、同じ試験をやり直した結果は問題なかったというから、継続して使用しても大丈夫ということだ。

 他メーカーにおいても記者会見を見る限り、世に出まわっているモデルについてリコールになるような問題は起きていないようだ。出荷停止となった6車種についても、ダイハツの各車種がそうだったように国土交通省などにより安全が確認されれば生産は再開することだろう。

 しかしながら、根本的な問題は再び販売できるということではない。自動車メーカーへの信頼が失われたこと、そしてブランド価値が毀損されたことが問題だ。個社での対応にとどまらず、自動車業界として信頼回復へ向けての具体的な動きを期待したい。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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