この記事をまとめると
■クルマは長年乗っていないと劣化が目立つようになる
■ガソリンやオイルは放置すると劣化して役目を果たさなくなる
■紫外線や湿度などの外的要因もクルマの劣化を進行させる原因だ
放置車両はなぜか劣化しやすい
趣味のクルマを所有している人で、仕事が忙しかったりとちょっとした事情でしばらく乗らない期間があったとき、半年や1年経って久しぶりに乗ろうとエンジンをかけようとすると、「キュルキュルキュル……」とセルはまわるけどエンジンがかからない、なんてことはそれなりにあることです。
人によっては「しばらく相手してやれなかったからへそを曲げちゃったのかなー」なんて思わず擬人化してしまったりすることもあるでしょう。
でもじつはこの考え、一部は当たっていると思います。クルマという機械はなぜか放置期間が長くなるほど調子が悪くなる傾向があるんです。
これはけっして人格をもっていて「へそを曲げちゃった」わけではありません。確実に原因があることなんです。
ここではクルマを放置するとなぜ調子が悪くなるのかということを、ちょっと掘り下げてみたいと思います。
■放置中にエンジンの内部ではこんなことが起きている
長期間放置すると、なぜエンジンがかからなくなったり、調子が悪くなったりするのでしょう? ちょっとエンジン内部に想像力を働かせてみます。
・オイルが流れ落ちる
放置するとまずエンジンの内部ではオイルが重力に引かれて下の方に流れ落ちていきます。エンジンという機械は内部でピストンやクランクシャフト、カムなどのパーツがこすれ合いながら稼働しています。そのこすれ合う間にオイルが膜を張っているから傷つかずに済んでいるんです。
では、オイルが流れ落ち、膜が薄くなってしまったらどうなるでしょう? 金属同士が直接こすれ合うので摩耗したり傷ついたりしてしまいます。これがひどくなると焼き付いたりカジリが発生して表面が破損してしまいます。
よほど長期間の放置でなければ動かしているうちにオイルがまわり、ここまでのダメージにはなりませんが、しばらく放置したあとでいきなりエンジンを高回転までまわしたりした場合は、この限りではありません。
・燃料が劣化する
また、燃料系統にも徐々に変化が起きています。燃料のガソリンは揮発性の液体なので、動かしていない状態でも、燃料系統の各部で揮発してしまいます。とくに燃料を噴射するインジェクターの噴射口は空気に触れているため揮発が進みやすい部分です。
また、ガソリンは劣化しないと勘違いしている人もいると思いますが、長期間放置しているとガソリンも劣化が進みます。成分が酸化していき、揮発の進行と併せてだんだん茶色くドロッとしてきます。場所によっては周囲の金属の成分と化合して緑色をおびたりします。
こうなってしまったガソリンは、本来の着火性能を発揮出来ないため噴射しているのに燃えにくく、エンジンの始動不良状態を起こします。
また、インジェクターの噴射口はけっこう精密な構造をしています。その部分でガソリンが劣化すると、インジェクターの作動不良を引き起こす原因になります。これもまた始動不良の原因になり、始動しても不調な状態になる可能性が高いんです。
■バッテリーの性能低下
クルマのバッテリーは大きくて重いので、かなりタフだというイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。そのせいか、ちょっと放置したくらいでは性能が低下すると考えていない人も少なくないように感じます。
しかし、バッテリーは放置によって確実に性能が低下します。いちばんの原因は「微弱電力の消費」でしょう。
クルマは始動していない状態でも微量の電力を消費しています。いわゆる「待機電力」というヤツです。リモコンキーからの信号を受信するために、ECUやセンサーは常に起きている状態を維持していなければなりません。
また、いまはほぼ見かけませんが、純正の時計や後付けの温度計などの常時電源に接続したアクセサリーも、微量の電力を消費します。
これらの電力消費量では半年程度でバッテリーが空になることはそうないと思いますが、それ以上になると完全に上がってしまうこともあります。
また、何らかの原因で蒸発したりして内部のバッテリー液が減っていくと金属パーツの劣化が進み、再生不能な性能低下を招くこともあるようですので注意しましょう。