すでに一定の効果を挙げていたロンドンでは適用範囲を拡大
イギリスの首都ロンドンでは、排気ガス規制に適合しない車両への通行料となる「ULEZ(超低排出規制ゾーン/Ultra Low emission Zone)」の適用範囲拡大への大規模抗議が一時話題となっていた。そもそもすでに基準未達成車両の所有者に対し日額12.50ポンド(約2400円)の徴収が2019年より導入されているが、今回はその適用範囲を市の中心部だけではなく郊外までに広げたことで物議を醸している。
なお、イギリスではロンドンだけではなく、イギリスのほかの主要都市でも同じような制度が導入されていくのではないかとの報道もある。
気をつけたいのは、筆者が訪れたニューヨーク(マンハッタン地区)、パリ、フランクフルトなどの先進国主要都市は、東京と比べると街がコンパクトなことに驚かされた(基本クルマでしか移動できないロサンゼルス市などはエリアが広大すぎるが)。東京はそれこそ江戸のころから世界的にも大規模都市となっていたが、普段、東京23区内をチョロチョロ移動している限り、あくまで筆者個人としては、東京でいわれる都心部レベルだけを見ても、欧米の主要都市は東京都心部よりも負担も軽く徒歩で移動可能で「コンパクトな街だなあ」という印象を受けた。
東京都心部よりもコンパクトとなれば自動車の流入量を調整する意味でもロードプライシング導入をすすめる動きもやむを得ないとも感じてしまう。
しかも個人差はあると思うが、いまどきの東京都内はバブル経済のころに比べれば渋滞発生もかなり限定的なように感じている。首都高速をはじめ周辺での道路整備が進み、都心を単なる「通過点」として流入してくる車両を減らしていることも大きい。
しかし、それよりも「失われた30年」ともいわれるほど経済が停滞したことも影響しているようにも感じている。少なくとも、ニューヨークのマンハッタンのように、平均車速が11kmというようなヘビーな渋滞状況が街なかで起こっているという印象は東京にはない。
交通渋滞は時間など多くの損失や、地球環境への負荷も高まってしまうのでけっしていいこととはいえない。ただ、少し前にタイの首都バンコクを訪れると、コロナ禍前のようなヘビーな渋滞が戻ってきていた。時間がかかり、タクシー料金も高くなってしまうのだが、「渋滞が戻ってきた」と、バンコク名物でもある渋滞の本格復活に嬉しくなってしまった。
ロンドンの適用範囲拡大や、ニューヨーク市の予定どおりのロードプライシング導入、そしてバンコクの本格的な渋滞の復活、いずれもそれだけ経済活動がコロナ禍前レベルへ順調に回復しているバロメーターのように見える。それに対して東京を見ると……、渋滞が少ないのが道路網などインフラ整備や都市開発などのおかげであることを信じたい。