不便です! 壊れます! お金もかかります! それでも「旧いクルマ」の虜になる理由 (2/2ページ)

クルマとの距離が近いのもクラシックカーの魅力

●チョークレバー

 キャブレターやメカニカルインジェクションポンプ(通称メカポン)仕様のクルマは、冷えた状態のエンジンを始動した際に回転数を高く設定しないとストールしてしまうことがあります。そこでチョークレバーを引くことで混合気の度合いを調整し、エンジンの回転を安定させます。やがてエンジンが暖まってくるにつれてチョークレバーを手動で元の状態に戻していきます。

 そのときどきによってベストな状態が異なる、まさに感覚に頼り切った調整が求められる世界。愛車のオーナーとその主治医だけに許された特権であり、大事な儀式といえます。

●エアコン(クーラー)レス

 いまや標準装備があたりまえとなったエアコン。しかしかつてはクーラーがオプション設定されるほどの贅沢な装備でした。いまの基準ではエアコン(クーラー)レスですが、もともとはあと付けが大前提だったわけです。

 たとえ古いクルマであっても、エアコン(クーラー)が利いたほうが、車内が快適であることは確か。しかし、車重だけでなく、故障要因も確実に増えます。また、乗車している人間はエアコンが利いて快適であるいっぽうで、クルマには負荷がかかっています。古いクルマに対して、猛暑日の渋滞のなかでエアコン全開なんて酷な話なのです。

 クルマだって暑い、というか辛い。それならば、運転するドライバーもその暑さに耐える。その一体感がむしろ心地良いと感じたら、もはやヘンタイの領域かも!?

●まとめ:メーカーやお国柄などの個性が強いことも魅力

 かっちりとした質感と手応え。工業製品であることを実感できるドイツ車、機械というより、どこか血が通った生き物のような気配を感じさせるイタリア車、派手さはないけれど、ある種の気高さを感じさせるイギリス車、どことなく牧歌的な肌触りの良さを感じるフランス車。そして、否が応でも昭和という時代を思い起こさせてくれる日本車。古いクルマであればあるほど、お国柄やメーカーなどの個性・味が色濃く出ているように感じます。

 それはまさに電子制御や空力、時代の要請による安全装備など……。あらゆる添加物が混入していない、天然素材だからこそ味わえる世界ともいえそうです。ただ、純度の高さの代償として、安全性や環境面への配慮が現代の基準に達していないことも事実です。そのあたりを踏まえつつ、現代のクルマとは異なる接し方、扱い方を意識する必要がありそうです。


松村 透 MATSUMURA TOHRU

エディター/ライター/ディレクター/プランナー

愛車
1970年式ポルシェ911S(通称プラレール号)/2016年式フォルクスワーゲン トゥーラン
趣味
公私ともにクルマ漬けです
好きな有名人
藤沢武生

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