【試乗】3億超えの怪物EVハイパーカーを公道のワインディング貸し切りで爆走! 衝撃しかないピニンファリーナ・バッティスタの走りとは (2/3ページ)

ドライブモードによって特性が変わる

 試乗は箱根ターンパイクを貸し切り、クローズドコースとしてクルマの性能を自由に引き出せるステージが用意されていた。メーカー公表値で最高速度350km/h、0-100km/h到達加速1.86秒というモンスターマシンなだけに、その性能のいち部分だけを試すだけでもコースクローズは避けられないことだ。サーキットを貸し切ってしまえば話は早いだろうが、そうするとロードカーとしての日常的な使い勝手からかけ離れてしまい、こうした思い切った手段が取られたのだと思われる。

 まずは安岡秀徒プロドライバーの助手席に乗り、コクピットドリルを受けながら助手席走行を体験させてもらう。こうした車両を使いこなすためにはコクピットドリルは不可欠であり、ドライブモードやモニターの操作など、走行に必要な方法のいくつかを共有してもらう。助手席に乗っていても動力性能の力強さと、またエンジンのないなかで5秒以下で一気に200km/hまで加速する圧倒的な動力性能にただただ驚かされるばかりである。

 乗り替えポイントでドライバーチェンジし、今度は自らがコクピットにつく。ステアリングやシートはすべて電動で、コクピット画面左側のモニターでシートアジャスターを呼び起こし操作する。また、ステアリングのチルトおよびテレスコピピックも同様に画面を通しての操作となっている。

 ドライバー正面にある小さな四角形のモニターにはドライブモードの表示と車速などが表示され、右側にある大型のモニターにはタイヤ温度やブレーキ温度、走行状況なども映し出すことができるようになっている。すでにシステムはREADY状態となっている。コクピット運転席右側、センターコンソール左横にあるダイヤルスイッチがドライブセレクト設定スイッチとなっていて、「P、リバース、ニュートラル、ドライブ」と右にダイヤル操作する。ブレーキを踏み込んでいなければDレンジにシフトすることはできない。

 ドライブモードは、「エコ、コンフォート、スポーツ、トラック、インディビジュアル」と用意されていて、それぞれイタリア語で表記されている。エコモードでは最大476kmの航続距離が可能となり、最高速度は200km/hと制限されていて、このとき駆動するモーターは前輪用のふたつのみとなる。いわゆるFFドライブとなっているわけで、普段日常的に市街地を低速で走行する場合は、エコモードを使うと実用的に感じられる。このモードではサスペンションも柔らかくステアリングも軽い。

 走行上の使い勝手としては、ハイパーカーである気難しさなども一切感じることなく、AT限定免許のオーナーでも普通に運転できる扱いやすさを備えているのもガソリンエンジンのハイパーカーとは大きく異なる点だ。

 走り出すと室内は非常に静かで、タイヤが跳ね上げる飛び石が車体フロアにバチバチと当たる打音がやけに大きく聞こえる。ホイールハウスには樹脂性のインナーフェンダーが備わり、このバチバチ音はフェンダーではなくモノコックそのものに当たっているのだ。ガソリンエンジン車であればミッドシップにマウントされるであろう大排気量ハイパワーエンジンのサウンドにより、こうしたノイズは掻き消されてしまうが、EVであるが故に細かな音が聞こえてくることはある程度やむを得ない部分だろう。

 逆にガソリンエンジンやハイブリッドのハイパーカーは室内の騒音が大きく、パッセンジャーシートの乗員と会話することも難しい。こうしたモデルにはヘッドフォンが純正で用意され、インターカムを通じて会話をしたり、またノイズキャンセラーのヘッドフォンをするなどの耳を保護するような仕組みが取られている。

 一般的なエコモードからコンフォートモードに切り替えると、最高速度は280km/hに引き上げられ、最大トルクは1200Nmが発せられるようになる。これでも必要にして十分以上のハイパワーといえるのだが、ダイヤルをほんの1ノッチ動かすだけでこれだけ性能を切り替えられるということが電動車の面白いところである。

 このモードからは4輪駆動車となり、前後のモーターが出力/トルクを発生し加速時の車両安定性や安定感なども高まってくる。ステアリングはやや重めになり、より安定した操舵フィーリングになるが、じつはこのステアリングシステムは学習機能が備わっていて、オーナーが変わるたびにそのオーナーのステアリング操舵を学習し、よりマッチした特性に切り替わっていくのだという。普段、ハンドル操作をいかに少なくするか、操舵量を小さく抑えることを自己流の操舵感覚で操作していると操舵角が小さくても旋回できるような特性に数秒で切り替わっていった。

 次にスポーツモードへと切り替える。スポーツモードにすると、最大出力は1400馬力、最大トルクは2000Nmにまで発揮できるようになる。また、エンジンサウンドのような音がスピーカーを通して車外へ発させられるようになる。

 さらにその上のトラックモードを選択すれば、最高出力の1900馬力と2340Nmの最大トルクが発揮できる。最高速度も350km/hが可能になるというわけだ。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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