レクサス車の品格を感じる走り
キーとなるのは室屋義秀氏がアドバイザーとして加わっているという点。室屋氏は世界的にも有名なエアレースのパイロットで、競技用飛行機を自由自在に操る。その感覚的センスをRZと融合させ、実車化したのが今回の特別仕様車というわけだ。
確かに従来の特別仕様車ならカタログのディメンション数値を大きく変えずにスポイラーや加飾などでカスタマイズしていることが多い。しかし、このモデルは全幅を70mmも拡幅。全高は10mm下げている。
またオーバーフェンダーやボルテックスジェネレーター、ルーフ+リヤウイングのツインスポイラーなど迫力と空力特性向上を果たしているところが室屋マジックといっても過言ではないだろう。
さらに21インチの大径ホイールや35扁平タイヤの装着も、スポーティな演出としてバランスよく収まっている。
ただこうしたタイヤを装着すると乗り心地や操縦安定性、電費面での影響も無視できなくなる。とくに2トンを超える車重を支え、レクサス車としての質感と快適性も備えることは簡単ではない。
こうした難題に取り組んだのはレクサス車の操縦性を託される「匠」テストドライバーだが、今回は加えてレーシングドライバーの佐々木雅弘選手をアドバイザーに加えている。正確には室屋氏も佐々木選手も2023東京オートサロンに出展された「RZ スポーツ コンセプト」の監修に加わり、それをベースに匠が現実化したといえるだろう。
コクピット(あえてそう呼ぶ)に乗り込み、走行フィールを試してみる。
迫力ある外観とは裏腹に室内は静寂で快適だ。エンジンサウンドを演出するようなギミックはなく、レクサス車として相応しい質感と静寂を保っている。
ゼロ回転から最大トルクが引き出せ、乗り手をビックリさせる加速性を引き出すことも可能だが、通常のモードではレクサス車としての品格を保っている。
段差通過時のハーシュは2トンの車重を支えるスプリングや21インチのタイヤ/ホイールは硬く、そのショックはなくし難いが、ボディやダンパーのチューニングで収斂性を高め、不快領域を最小限としている。高速道路巡航時などではより快適な周波数に仕上げられているはずだ。
最高速度が120km/hに制限されている日本の高速道路。山岳路の登坂を考えても電動モーターの駆動トルク特性は相応しく、操縦安定性も低重心で安心感が高い。
レクサス・ブランドの信頼性の高さと中韓車のデザインに見劣りしない存在感。そのバックボーンにある専門分野の知見が生かされたディテールがBEVに新しい魅力を吹き込んだのだろう。BEVでありながら「Fスポーツ パフォーマンス」を名乗る意味は奥深い。それは所有した者だけが知り得る特権だが、今後のBEVモデルにも引き継がれていくのだと期待して見守りたい。