新車購入は「入社1年目の新人」だと好条件が引き出しやすい! ただし「もう辞めました」のリスクもアリ!! (2/2ページ)

新車購入はセールススタッフとの人間関係構築が重要

 何をいいたいのかというと、数カ月の研修プログラムを経たとしても、過去の簡単な座学で販売現場に放り込まれていたころと同じほど、「右も左もわからない」状態で新車を売ろうとしているのである。まずはとにかく多くのお客と商談を繰り返し、販売実績を積み上げていくなかで、自分の「商売スタイル」を確立させていくしかないのである。

 筆者の経験で行けば、「この新人は将来の役員候補だな」とすぐに伝わる、スバ抜けて新車販売の世界への適正の高い新人もいれば、「いまどき」とはいいたくないが、世代間ギャップをモロに感じるような、オジサン世代としては対応に困るような新人もおり、昔に比べればそのパーソナリティは「多様化」しているのも現状だと感じている。

 よく「新車を買うなら新人とベテラン、どっちがいいか」という議論があるが、値引きなど購入条件で好条件提示を重要視するなら新人セールススタッフがおすすめである。入社0年、つまり当該年度入社のセールススタッフには、いわゆる販売ノルマは設定されないようである。

 たとえば、販売会社全体での年間目標販売台数について立地などを考慮して各店舗に割り振り、店舗に割り振られた台数を、経験年次などによって店舗のセールススタッフにそれぞれ割り振られることになるが、配属された新人は「カウント外」となるというのである。いまどきのセールススタッフは単に新車を数多く売ればいいというわけではない。月締めなどで一定の粗利が確保されなければ、セールスマージンが支払われないという「足切り」があるとも聞いている。

 その足切りも台数や粗利だけではなく、下取り車入庫台数やローン利用の有無なども管理されるという。こうなると、経験2年次以降のセールススタッフはガンガン値引きを拡大させて乱売するわけにもいかない。ただし、そのような「足かせ」のない新人セールススタッフは例外となる。新人セールススタッフだけでは受注まで持ち込むのはなかなか難しい、マネージャーや店長などが商談に同席してくる。同席する上司も「新人の案件」とすると本部の決済も取りやすいので、条件拡大もスムースに進む。

 ただし、いまどきは新車の車両価格も単純な改良を伴うものかを問わずに諸物価高騰により上昇基調にあるが、十分コストアップ分を吸収できるものではないので、車両本体価格からの値引きはかなり厳しい。条件アップの中心は下取り査定額の調整(つまり上乗せ)がメインとなっているようである。

 新人セールススタッフは「早期退職(すぐにやめてしまう)」というリスクがある。また、世代間ギャップなのかもしれないが、ベテランほど納車後に親身につきあってもらえるかも疑問が残る。

 担当セールススタッフが退職すると、とりあえず同じ店舗のセールススタッフが引き継ぐことになるが、それは形式的なものとなることが多い(自分が売ったお客の管理だけで手いっぱい)。基本は点検・整備目的の「サービス工場のお客」扱いとなってしまう。引き継いだセールススタッフも自分が売ったお客ではないので、それほど積極的にコミュニケーションをとろうとはしてこない。担当セールススタッフが残っていれば、タイミングを見て「いま好条件でご紹介できる新車があります」といったアプローチがあったり、それなりのメリットは期待できる。

 セルフレジやファミリーレストランのネコ型配膳ロボットが普及するなか、いまでもひざを突き合わせてセールススタッフと商談しないと原則新車を買えないという面倒が残っているのは、そこ、つまり「セールススタッフとの人間関係の構築」があるのだ。趣味としてクルマ好きな人ならば、乗り換えるたびに他メーカー車を競わせて好きなクルマに乗るのも苦にならないだろうが、世のなかそのような人ばかりではない。

「面倒くさい」新車購入を可能な限り楽にさせる(乗り換える面倒)意味でもセールススタッフとの人間関係構築が重要となる。ただ、それ自体が面倒くさいと考える人が、若い世代を中心に増えている。とはいえオンライン販売は日本よりも加速度的に社会のデジタル化が進むアメリカでもいまひとつの様子。となると、働き手不足対策もかねて店頭で「セールススタッフ型ロボット」とドラスティック(形だけの)な商談をする時代がやってくるかもしれない。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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