99%がリヤ駆動のなかで日野がFFのトラックを発売! 激レアなFFトラックはどこにメリットがあるのか?

この記事をまとめると

■トラックの99%がFRかFRベースの4WDを採用している

■しかし日野デュトロZ EVはFFだ

■FFを採用した理由を解説

超低床を実現するためにFFを選択

 いまや乗用車の9割近くはFF(フロントエンジン・フロントドライブ)かFFベースの4WDだ。FFレイアウトの車両は、生産効率が高く(パワートレインを一塊りにできる)、ボディサイズから室内空間を最大化しやすい。安くて広くて燃費がいいクルマを作りやすいから当然の帰結だ。

 だがトラックは現在でも全体の99%がFR(厳密にいえばフロントミッドシップ)かFRベースの4WDとなる。なぜなら荷物を積む荷台を支えるリヤタイヤが駆動輪となっているほうが登坂性能は高く、構造が単純なので堅牢性も高い。加えて修理もしやすい。

 ところが最近は、FFのトラックも出現している。それが日野のデュトロZ EVだ。このトラックはパネルバン型のEVで、前側にモーターを搭載してフロントタイヤを駆動している。

 トラックなのになぜFFレイアウトなのか? と思われる方もいるだろう。しかし、これまでと発想を変えて開発&採用したレイアウトなのだ。同車両は大手宅配便業者に協力してもらい開発していった。というより、そもそも宅配業者の要望から生まれたものだ。このあたりは、かつて存在したウォークスルー型のバン、トヨタ・クイックデリバリーと開発の経緯が似ている。

 宅配便の小型トラックは、毎日膨大な個別配送の荷物を積み下ろしする。そのため、乗り降りのしやすさ、荷物の積みやすさが、業務の効率を直接影響するのだ。だから現場からは従来のトラックでは実現不可能な低床化が望まれてきた。

 そう、FFにするのが目的ではなく低床化が目的で、リヤの車軸やデフギヤを省くためにFFを選んだのである。バッテリーを薄く広げて搭載することで、低床化しても十分な航続距離を確保している。EVだからこそ、実現したレイアウトなのだ。

 ちなみに地面からフロアまでの高さは450mmしかなく、乗用車のフロアと同じくらいの高さ、従来の日野デュトロのパネルバンの低床タイプでも845mmもあり、ほぼ半減しているのである。また、海外ではローキャブの大型トラックも珍しくない。それは乗り降りに時間がかかるハイキャブでは、配達などの作業性が大きく損なわれるからだ。

 じつは大昔にはFFのトラックも存在した。それはシトロエンの「Hトラック」だ。実際には基本形状はパネルバンだが、トラックや色々な形状のボディがあったようだ。現在も移動販売車のベース車両として人気があり、最近のほうが日本に輸入されているほどだ。

 日野もかなり前に「コンマース」というFFのバンを発売したことがある。また、バンであれば日産のNV200などFF車は存在する。

 将来的にはインホイールモーターになって、リヤタイヤを駆動するEVが宅配専用トラックとして登場することになるかもしれない。そうなれば、さらに小まわり性(デュトロZ EV自体はFFでも小まわり性高し)が向上して、市街地での配送に活躍することになるのではないだろうか。

 今後はジワジワと技術の進化とともに、FFレイアウトのトラックが増えていくことになりそうだ。


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