この記事をまとめると
■建設機械のひとつにホイールローダーと呼ばれる特殊自動車がある
■ホイールローダーは前方にパワーショベル・バケットを備えている
■日立建機から新登場の中型ホイールローダー2機種は環境性能にも配慮したモデルとなっている
建機は世界レベルの環境性能を保持しなければならない
土木・建設に携わる人なら、ホイールローダーがどんな建設機械であるかをすぐに理解できるが、一般人にはピンとこないかもしれない。この車両は、前方にパワーショベル・バケットを備えた特殊自動車の仲間。見た目はブルドーザーに似ているが、荷積みができるようにバケットを高く持ち上げての複雑な制御も可能になっているところに特徴がある。
これらを総称してショベルローダーと呼ぶが、そのなかでもタイヤを使って走行するものを、とくにホイールローダーと呼んでいる。外見はブルドーザーのような形状で、使用される場所が土木・建設現場だから、荒々しく単純な建設機械であるかのように思われがちだ。しかし、実際は最新のテクノロジーを駆使した、インテリジェンスな精密機械なのである。
今回新たに登場したのは、日立建機が製造・販売する中型ホイールローダー2機種(ZW-7シリーズ: ZW180-7・ZW220-7)で、特定特殊自動車排出ガスの規制法(オフロード法)・2014年基準(第4次規制)に適合させている。この基準は、排気ガスによる大気汚染を防止することを目的としており、欧米の現行規制に匹敵する厳しいものだ。要するに、建設機械は前提として世界レベルの環境性能を保持しなければならないということなのである。
環境性能とも関連するが、燃費性能は経済的な観点からも重要な性能だ。これまでのホイールローダーは、リフトアームを素早く上昇させるために、アクセルペダルの踏み込みと速度調整のブレーキ操作を同時に行う必要があった。これに対して、新たに搭載された「アプローチスピードコントロール」は、リフトアームの上昇に合わせて走行速度を自動で制御するので、アクセルとブレーキの複合的な操作回数を減らし、燃料消費量あたりの作業量を7~20%向上させたのだ。
また、ペイロードチェッカーを標準装備したことで、生産性の向上も図っている。これは、リフトアームを上昇させたタイミングで、バケット内の積載重量を計測できる荷重判定装置。オペレーターは積み込み作業と同時に積載量の把握ができるので、過積載や過小積載の防止に役立つ。さらに、積み込み後にバケットの残留物積載重量を再計測できるので、それらのデータをもとに作業工数や積載量の最適化を行なうなど、生産性の向上にもつなげられる。
安全性に関しては、ハイテクな装置が投入された。3体のカメラで車体周囲270°の俯瞰映像や後方映像を、キャブ内のモニターに表示する「周囲環境視認装置」を新たに搭載。加えて、障害物までの距離と車体の速度から衝突リスクを段階的に判断し、表示とブザーで警告する「後方障害物検知システム」がオプションに設定されている。
また、車体トラブルの際のエラーコード表示や、センサーデータなどといった建機の状態を、通信で確認できるシステムを採用。コントローラーや通信端末のソフトウエアの更新も、同様に遠隔で行うことができる。このようにIT化を進めることでメンテナンス面でも効率化を図り、経済性の向上や人手不足への対応を可能にしているのだ。
もはや建設機械は、単にパワーにものをいわせて仕事をするといったものではなく、人や環境に対する配慮や生産効率を高い次元で実現する、ハイテク機器に進化したといっても過言ではないだろう。