スイスのメーカーってイメージないけど……F1参戦記録ももつ「モンテヴェルディ」のスーパーカー「ハイ450SS」が驚きのパフォーマンスだった (2/2ページ)

450馬力のヘミV8をミッドシップしたスーパーカー

 1968年になると、モンテヴェルディはさらにその生産規模を大幅に増大するプランを打ち出すが、それはカロッツェリア・フルアの生産能力をすでに大きく超えた数字だった。

 結果、フルアはカロッツェリア・マッジョーラに、モンテヴェルディ車のボディ製作を依頼するが、すでに近代的な生産設備を持つマッジョーラとの間では生産コストに大きな差があり、モンテヴェルディはその案を断念。やはりイタリアの小規模なカロッツェリアに、ボディの製作を依頼することが残された唯一の方法だった。

 そのような困難を乗り越えて、モンテヴェルディは1970年のジュネーブ・ショーで、「ハイ450SS」のプロトタイプを披露する。

 クライスラー製の7リッター版V型8気筒OHVエンジンをミッドに搭載し、車名に掲げられるとおり450馬力の最高出力を発揮したこのプロトタイプは、当然のことながらショーでの大きなトピックスとなったが、ボディはフィッソーレのトレヴァー・フィオーレによるものか、あるいはピエトロ・フルアのデザインによるものか、現在においてもその最終的な答えは得られていない。

 ちなみにネーミングの最初にあるハイとは、ドイツ語で「サメ」を意味するもの。事実、この450SSは、0-100km/h加速で6.9秒、最高速では280km/hというテストデータを記録している、まさにサメの如き運動性能をもつモデルだった。

 モンテヴェルディは当初、車名を変更し49台のハイ450GTSを生産する計画だったが、実際に完成されたのは1台のみ。1990年代にはスペアパーツからさらに2台のレプリカが製作され、それらはスイスのルツェルンにあるスイス国立交通博物館に所蔵されている。

 スーパーカーによってスピードを追い求める夢、それはスイスという小国にとっても、野心家が抱くごく自然な夢だったのである。


山崎元裕 YAMAZAKI MOTOHIRO

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 /WCOTY(世界カーオブザイヤー)選考委員/ボッシュ・CDR(クラッシュ・データー・リトリーバル)

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