まずは純正オーディオのアップグレードから始めてみる
■音域をわけることで「解像度」を向上させる
ヘッドユニット(ラジオとアンプが一体になった音を再生する装置)に音域をわけられる機構(ローパスフィルター)が付いていればベストですが、なければ別途「ネットワーク」という装置を使って音域ごとに配線を分岐してやれば、中低音域は純正スピーカーで、高音域は追加したツイーターがそれぞれ得意分野を受けもって音域の守備範囲がよりきっちりとわけられるので、「解像度」も向上できるでしょう。
ただ単に配線を分岐してツイーターに配線を増やすやり方では、音域自体は広げられますが守備範囲はそれぞれ広いままで鳴らすことになるので、どちらも苦手な音域を抱えながら働くことになり、思ったような効果が得られないでしょう。
この、スピーカーを効率よく鳴らせるための配線の組み方は少し専門的な知識が必要になりますが、それさえクリアできれば、かなりコスパよく音質の向上が見込めるでしょう。
■コストをかければ確かに音を良くできるけど……
カーオーディオの分野では、「音質にこだわるなら○○○○はしたほうがいい」という、ちょっとした圧を伴ったアドバイスが飛び交っているように感じます。確かにコストをかければかけるほど音質を向上できるという図式もあるとは思いますが、それは必ずしも万人にオススメできる内容ではないのではないでしょうか。
よくあるアドバイスの例を挙げてみると……。
<低音を増強するサブウーファーはあったほうがいい>
スネアドラムやベースなどの重低音を再生するための「サブウーファー」という大径のスピーカーがあります。これを鳴らせれば、身体に響くような重低音が味わえるようになるのですが、これはちょっとコスト面で難アリです。
スピーカーは大径なほど多くの電力を必要とします。その電力はアンプが供給しますが、16cmを越えるような大径のスピーカーをきっちり動かすには純正のヘッドユニットの能力では難しく、追加で専用のアンプが必要です。アンプとスピーカーが一体になった製品もありますが、それでも数万円はしますので、予算に余裕がなければオススメしません。
<デッドニングはしたほうがいい>
スピーカーというのは音の信号を振動に換える装置です。そのため大きな音を鳴らすと振動も大きくなります。振動が大きくなると周囲に振動が伝播してドアの鋼板を共振させる可能性があります。この共振=ビビリを防止するために制震材を貼り込むことを「デッドニング」といいます。
確かにある音量以上になると共振が始まってしまうのは、鋼板で囲まれているクルマの宿命といえます。しかし、常識的な音量で音楽を楽しんでいるレベルでは、いうほどビビリの発生率は高くないと思われるので、一部の大音量好きな人を除いて必要はないといっていいのではないでしょうか。
<純正スピーカーは性能が悪い>
確かに昔の純正スピーカーは「音が鳴ればOK」というレベルのものもありましたが、少なくとも平成に入って以降は、軽自動車ですら純正スピーカーの性能は捨てたものじゃないというレベルに向上していると感じられます。
社外の中級以上のスピーカーに換えれば音質を向上できるのも事実ですが、いまでは純正が悪いという印象はなくなってきているので、まずは純正スピーカーを活用してみることをオススメします。
と、このように「クルマなんだから雑音が多いし、予算的にあんまりコストかけるのもなぁ……」と考えているであろう多くの人には、お金をかけずにちょっとした工夫で音質を向上できる余地がまだまだあるということを知って欲しいです。
ただし、ちょっと手をかけて効果が実感できると、「もっとよくしたい!」という欲求が生まれてしまうのもまた性(サガ)。結局コストがかかってしまう方向に向かってしまうものですが、まずはいまあるリソースのポテンシャルを引き出してあげることをオススメします。