とにかくロングホイールベースであることが重要
そもそも中国で「Lモデル」のブレイクの発端となったのは、2012年の北京モーターショーにおいてアウディが「A6L」をデビューさせたのがはじまりとされている。筆者が聞いたところでは、アウディがこのロングホイールベースモデル着想のきっかけとなったのはレクサスLSだったとも聞いている。当時、世界市場では4代目、国内市場では初代となるLSには「LS460L」などとしたロングホイールベースモデルが存在していた。
アウディはこの様子を見て、「イケる!」と思ったそうだ。しかし、当時ドイツのヘッドクォーターに話をもち込むと、「世界共通モデルの販売以外は認めない」といった冷めた反応が返ってきたとのこと。それでもいろいろ交渉を重ね、中国の現地工場で生産したA6Lを市場投入すると大ブレイク、2016年には「A4L」もデビューさせ、以降もLモデルのラインアップ拡大を進めた。
そしてメルセデス・ベンツやBMWなども追随するようになり、さらなる広がりを見せた。
中国では官公庁や企業では、役職により社用車として使えるクルマにヒエラルキーが設けられているとのこと。たとえば、部長職ならA6、課長職ならA4といった感じらしい。さらに、いまのような電動化が進む前では排気量の制限も厳しかったようだ。たとえば課長職用は1.8リッター以下といった感じで規定が設けられており、そこでパワーを補うためにターボを装着する動きも顕著になったとも聞いている。
乗ることが許されるサイズのなかで大型サルーン並みの快適性をもたせたいということになれば、ミッドサイズのA6にまずロングホイールベースモデルが用意されるのも不思議ではない。
ここで気をつけたいのは、単純にロングホイールベースであることを強調せずに、「後席の足もとを広げました」ではダメだということ。車名が「●●L」となっていることがステータスの象徴でありマストなのである。
日本メーカーでは、当初は「●●L」とする販売促進上の意味が日本の本社になかなか理解されなかったようで、従来車名で新型ではホイールベースを長めに設計したり、ロングホイールベースモデルに別車名が与えられることも多かったようだが、途中からLを車名にもつモデルが目立ってくるようになった。
欧州、とくにドイツブランドでは欧州で標準車がデビューすると、今回のQ6L eトロンのように、その後直近で開催される北京や上海、広州といった中国主要モーターショーでLモデルがデビューするのは「お約束」といっていいような状況となっている。
世界一の市場規模を持ち、現地生産が可能であり、そして専売車を設けても量販が十分期待できるといった環境もあって、Lモデルはすっかり中国市場では定着しているといっていいだろう。