燃費とクルマの流れを考えると制限速度はバランスが優れている
それでは、燃費・電費を考慮した最適な高速巡行速度というのは存在するのだろうか。目安はあるが、すべての車種に共通した答えを求めるのは、非常に難しい問題といえる。
前述したように、空気抵抗は車体形状によって決まる。Cd値として知られる空気抵抗係数を減らすよう各メーカーは工夫しているが、基本的には前面投影面積が広いほど空気抵抗は大きくなってしまう。同じCd値であったとしても、全高の低いスポーツカーよりミニバンやクロスオーバーSUVのほうが空気抵抗自体は大きくなりがちだ。
ミニバンなど前面投影面積の広いクルマはスピードを高めることによって燃費や電費の悪化度合いが大きいといえる。さらに、エンジン車においては車種によって変速比は異なる。小排気量になるほど全体にローギヤード傾向となり、高速巡行におけるエンジン回転数は高くなってしまう。
つまり、高速巡行において燃費や電費に優れた最適速度というのは車種によって違うものだ。エンジン出力に余裕があり(ハイギヤードなトランスミッションを組み合わせた)、空気抵抗の小さなボディをもつスポーツカーと、小排気量で前面投影面積の広いミニバンでは、おのずと最適解が異なってくる。
だからといってスポーツカーは120km/h巡行、SUVは100km/h、ミニバンや軽スーパーハイトワゴンは80km/hで走ればいい、とはいかない。個々のクルマにおける効率的な速度とクルマ社会全体の高効率を考えたときの効率追求が一致するわけではないからだ。
小排気量のエンジン車で高速移動していると実感しやすいだろうが、巡行速度にバラつきがあって、加速と減速を繰り返すような高速走行は燃費が悪くなりがちだ。理想的には一定速度で巡行したい。さまざまな車種が走行する高速道路において、ある程度バランスをとった速度で、皆が巡行することが効率面からは望ましい。
その意味では、日本の高速道路において多くの区間で設定されている80~100km/hという速度は、ひとつの目安としてコンセンサスがとりやすく、効率面においてもそこそこバランスに優れているともいえるかもしれない。