50年前に生まれた四角いワゴンがいま話題! 昭和レトロブームと共に「ボルボ240エステート」の人気が急上昇中だった (2/2ページ)

中古車として入手するなら絶対に譲れない条件がある

 そんなボルボ240エステートは、販売を帝人ボルボからボルボ・カーズ・ジャパンへと引き継がれ、1993年に生産終了、850シリーズに引き継がれることになったのだが、それがいま、どうして再注目を浴びているのか? 無論、冒頭に記した昭和、レトロブームもあるだろうが、TVやCMへの露出も理由のひとつといっていい。いまのクルマにない四角さ、ネオクラシック感によって、ほのぼのとしたシーンを演出できるからだろう。

 では、240誕生から50年を経た令和のいま、ボルボ240エステートの中古車を指名買いで所有するユーザーが増えているのは何故か。その理由として挙げられるのが、昨今のレトロブームで映えるエクステリアデザインであることはいうまでもないが、扱いやすい全長4790×全幅1720×全高1480mm、ホイールベース2650mmのサイズ、そしてもうひとつの大きなポイントが、ネオクラシックカーブームとは無関係に、日本中に240エステートの販売をメインとした信頼できるボルボの旧車専門店が存在し、かなり古いクルマであるにもかかわらず、手を出しやすいこともあるはずだ。

 つい最近では、「能登半島地震」を受け、ボルボ専門店が「240 SURVIVAL」と名付けられた、車中泊×防災をコンセプトにしたカスタマイズカーを発表、パーツの販売を開始したほどで、ただ眺め、そーっと走らせるネオクラシックカーとは違う超実用性を、令和に蘇らせているぐらい、その人気は衰えていないということになる。

 中古車としては150万~230万円ぐらいで流通しているのだが、ひとつ、中古車選びでは注意点がある。手に入れるべきは1991年式以降が鉄則で、理想は1993年式の最終モデル。その理由はエアコンの冷媒(1992年までは廃止されたフロンガス、1993年に現在でも使われるR134aに変更)にあり、1990年式以前はエアコンのレトロフィットに多額の費用がかかり、なおかつエアコンの利きも期待できないからだという。

 決定的なのは、登場が50年も前のクルマだけに、パーツの入手についてだ。1991年式以降であればボルボ専門店でのパーツの入手は比較的しやすいらしいのだが、それ以前だとかなり難しいようなのだ。樹脂パーツのひび割れ、エンジンの冷却機構についても要チェックで、それらを含めてコンディションをしっかりと見ているボルボの専門店での購入がより安心だろう。いい方を変えれば、比較的程度がよく、その後のメンテナンスも任せられる240エステートのほとんどは、ボルボ専門店にあるともいえる。

 ある意味、実用性も文句なしのボルボ240エステートは、昭和、レトロブームのいまの時代だからこそ、ひときわ輝いて見える”使える”ネオクラシックカーの代表格といえるのではないだろうか。敏腕CMプランナーやプロデューサーがその普遍的価値に目を付けるのも無理はない。1980~90年代当時、240エステートに憧れつつも、手が届かなかった、しかしいまはネオクラシックカーに出費でき、メンテナンスにもお金をかけられる余裕あるボルボファンが、人とは違うステーションワゴンとして粋に乗りこなすのも納得ではないか。ただし、最新の世界最先端のボルボセーフティ(先進運転支援機能)とは無縁の世代のクルマだから、一段と安全な運転を心がける必要はある。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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