輸入車ブランドも給電機能を装備し始めた
海外のEVやPHEVで、給電機能が必ずしも設定されないのは、EVを移動手段として単純に考えているからだ。また、急速充電口があればできるものではなく、クルマから電力を取り出すためのプログラムの書き込みが必要になる。それは原価を高めるので、取り組みが遅れている。
また、CHAdeMOは、充放電の接点のほかに、通信専用の接点を持つが、欧米で使うCCS(コンバインド・チャージング・システム)は通信専用の接点がなく、充電用接点で兼用する。したがって、充放電中にクルマと充電器や、家庭での電力量の変化を通信で確認することができない。CCSで給電できないわけではないが、何か不都合が生じる懸念が残る。ちなみに、テスラは、CHAdeMOと同様に、充放電中に通信できる機能を持つ。
そうしたなか、日本市場に導入されている韓国のヒョンデや中国のBYD、そしてメルセデス・ベンツは、日本市場の動向を学び、給電機能を備える。
給電機能は、現状、万一の災害対応と、太陽光発電を自宅に備える家庭向けという限定的な利用しか見込まれていないが、将来的には、地域で電力を融通しあうバーチャル・パワー・プラント(VPP)への拡大といった将来像が10年以上前から検討されている。人工知能(AI)を活用し、充放電管理を適切に行える電力網を構築すれば、地域や国全体での合理的電力の利用が前進し、省エネルギーがさらに進むと考えられている。
その前の段階でも、発電が不安定な再生可能エネルギーの電力安定にも、EVの蓄電機能を活かせる。それらはもはや、自動車メーカーだけの仕事ではなく、地域や国全体のエネルギー需給の管理とサービスの提供という事業になり、新たな産業の創出が欠かせない。そこに新たな雇用も生まれることになる。
EVの普及は、エネルギー問題の解決と、雇用の創出につなげることができ、21世紀の暮らしを快適にする期待がある。