この記事をまとめると
■国は2045年までに総工費5兆円をかけて総延長500kmの自動物流道路の整備を計画
■「自動化」がキーワードになっているが簡単に導入できるシステムではないのが実情だ
■有識者はもっと現実問題にスポットを当ててドライバー不足解決への議論をするべきだ
トラックやバスの「自動化」はそんなに甘くない
報道によると、岸田首相が4月22日に自動物流道路の基本的な整備計画を夏ごろまでに策定するように、関係閣僚に指示したとのこと。国交省(国土交通省)の資料によると、主要都市間を結ぶ総延長500kmの自動運転専用カートによる地価物流システムのことで、総工費5兆円にて2045年までに全線開通予定としている。同様のものがスイスでも計画されているとのことである。
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このようなものの整備が注目される背景としては、ますますトラック運転士の担い手不足が深刻となる現状の物流業界への対策としていると報じている。
トラック輸送だけではなく、バスやタクシーでも同様であるが、さんざんヤバイとされてきた2024年問題が4月1日以降顕在化している。いままでも基本給だけでは十分ではなく、残業手当など各種手当も含めてなんとかしのげるレベルを維持していたのに、その収入を保証しないまま、時間外労働を規制すれば収入が減るのは明らか。そして収入が減れば、離職者が増えるという流れも専門家ではなくとも予測できたはず。
ただでさえ満足に人員確保ができていないなか離職者が増えているので、トラック輸送、バスの運行ともに、筆者にはすでに大パニック状態のように見えている。
そのようななか、テレビの報道番組などに出てくるコメンテーターと呼ばれる人たちはすぐに、「問題解決は自動運転」と簡単にコメントしている。残念ながら、トラック輸送、バスやタクシーの運行事業者はそのほとんどが中小零細企業であり、その経営内容はかなり厳しい状況が続いている。世界的に紛争が多発するなか、円安傾向に歯止めがきかず燃料となる軽油やガソリン、LPガスは高値傾向が続いている。経営環境が厳しさを増すなかでは、自動運転システムを備えた車両や、自動運転システムをオペレーションする関連システムの導入などは簡単にできる状況にはない。それならと廃業する事業者が目立ってくることも容易に想像することができる。
そこへきて今度は自動物流道路である。ものごとをあまり否定的に見たくはないのだが、現状の政治の混乱を見ているとまた政治家が新たな利権を模索しているのかと見えてしまう。残念ながら国民と政府の間の信頼関係がほぼ崩壊しているいまの段階でこのような話が出てくれば、筆者みたいにものごとを斜めに見てしまう人は少なくないはずだ。