「カッコよくすること」に労力とコストをかけるのが評価の対象
そしてカスタムの定番メニューにもうひとつ「シャコタン」というものがあります。これは車高を下げていくと地を這うような独特の迫力が出て、それだけでカッコいい雰囲気にできるということで、ホイールの交換の次に、あるいは同時に行うという流れができています。
そしてそれが当たり前ということになってくると、ほかよりカッコよくするため、その探求が激しくなっていく人たちが出てきます。どれだけホイールとボディ面とを「ツライチ」にできるか、どれだけ地面に近く「シャコタン」にできるかということに労力、コストを注ぎ込み、1mmでも極みに近付こうと情熱を傾けていきます。
そしてそれが極まった車両に対しては、カスタム好きのクルマ乗りから賞賛が浴びせられ、しっかり評価されます。
カスタムの世界ではそういう流れがベースにあるため、ホイールとボディの間にまだまだ隙間があるクルマに対しては、ジムにも行かずにだらしないボディをしている人を非難するのと同じような目を向ける傾向があるのです。
ただ、「電車じゃん(笑)」といういい方は近頃では聞かなくなったと思います。先述のように、昨今はツルシの状態でホイールとボディの距離が近くなっているので、あまり電車の姿を連想できなくなりました。
■昔のクルマはなぜ電車のようにホイールが内に入っていたの?
「電車」といわれていたのはおそらく1980年代が最後ではないかと思います。では、その年代までのクルマはなぜホイールが内に入っていたのでしょうか?
その理由のひとつは、金属チェーンの装着を考慮しなくてはならなかったせいだと思われます。
金属のチェーンを装着したことのある人なら実感できると思いますが、金属チェーンはそれ自体が数センチの厚みがあり、構造上どうしてもたるみが出てしまうので、車輪が回転したときにタイヤの面から少し浮いてしまいます。それがタイヤとチェーンを専用設計したものなら浮きも最少にできますが、いろんな形状のタイヤと、汎用のチェーンでは浮いてしまう可能性がどうしても出てしまいます。
そのマージンを考慮しなくてはならなかったため、あの隙間が必要だったのでしょう。
そしてもうひとつの理由はプラットフォームなどの共用化の影響だと言われています。
コストを抑えるために違う車種で同じプラットフォームを共用するのはいまでも当たり前の手法ですが、昔はまだその活用がこなれていなかったため、車種の特性に合わせた足まわりを設計する際に多めの空間マージンを取らなくてはならず、それが外観にも現れてしまったというわけです。
その時代のクルマをカスタムのベース車両として見たときに、結果的にホイール交換をしたときの効果が高くなり、それが外観カスタムの定番として広まったという見方もできるでしょう。