この記事をまとめると
■EVの中古車は駆動用のリチウムイオンバッテリーの劣化に不安がある
■だがEV開発は前進してバッテリー劣化を抑えることができるようになっている
■EVの中古車市場が成り立たないとの論調は10年以上前の情報を基にした誤認だ
急速充電すればするほどバッテリーは劣化する
電気自動車(EV)の中古車への懸念は根強い。カギとなるのは、駆動用のリチウムイオンバッテリー劣化に対する不安だ。
EV用のリチウムイオンバッテリーは、廃車となる際でも容量の70%近くが残っている。しかし、クルマとして使うには容量不足となる。理由は、クルマは頻繁に加減速し、高速道路への合流のような場面では、普段あまり必要としない急加速が求められることもある。そうした短時間で大出力を得たい場面で、容量の減ったバッテリーは力不足になるのだ。もちろん、バッテリー劣化は、一充電走行距離の短縮にもつながる。
EVの新車時のバッテリー保証は、世界的に8年16万km(日産リーフの例)前後といえ、その間に70%以下の容量になった場合に交換など補償の対象となる。なかには、メルセデス・ベンツのように10年25万kmとしている車種もあり、2010年の日産リーフ発売以降、時を重ねることによって開発が前進し、バッテリー劣化を抑えることができるようになっている。
ちなみに、日産サクラ/三菱ekクロスEVの場合、日産自動車のEV開発者によれば、200Vでの普通充電を主体に使っていれば、日々100%充電をしても劣化はあまり心配しなくていいと教えてくれた。
逆にいえば、急速充電を繰り返す使い方だと、やはり劣化はある程度覚悟しなければならないということだろう。
リチウムイオンバッテリーは、100%充電から電力0近くまで使い切ることを繰り返すと劣化が進みやすい。これは、スマートフォンなども同様だ。可能であれば80%までの充電で、20%あたりまで減ったら充電するという使い方が、リチウムイオンバッテリーにやさしい使い方だといわれる。それでも、ゆっくり充電を行う200Vでの普通充電であれば、100%充電を繰り返してもバッテリーへの負担が少ないというのが、日産の技術者の考えであり、過去10年以上のEV実績からの反映といえるだろう。
急速充電は、80%までの充電に抑えられるが、それでも高電圧・大電流での急激な充電が、バッテリーに負担をかけるのである。
前置きが長くなったが、ということで中古車選びは、エンジン車でもEVでも車歴が重要で、EVならあまり急速充電していなかったものを選べばバッテリーへの懸念が減るのではないか。
いま、EV中古車販売が低調といわれるのは、上記のようなバッテリー、あるいはバッテリー制御の進歩がなかった初期のEVに対する評価であって、これから中古車市場に出てくる新しい時代のEVであれば、バッテリー劣化への懸念は改善され、手軽にEVを手にできる時代になっていくだろう。
エンジン車の時代から、新古車といえるような車歴の浅いクルマが、価格と性能の調和のとれた買い得車といわれてきた。そこはEVも同様だろう。EVは、バッテリー劣化があるので中古車市場が成り立たないとの論調は、10年以上前の情報を基にした誤認といえるのではないか。