運転士不足の特効薬として大型のバスやトラックにもAT限定免許を導入! でも大型車はまだまだMTだらけという現状 (2/2ページ)

地方ではまだまだMTの大型車が多い

 一方で都市部の大手事業者は、余裕があるとまではいわないが、それでも新車での車両入れ換えが可能だ。都市部の大手事業者が新車のバスを導入して限界まで使い切る(乗り潰す)ことなく、やや余裕をもたせて車両入れ換えを行い、都市部の大手事業者が放出した車両を中古車として地方の事業者が購入して車両の入れ換えを行うというケースが多い(地方の事業者でも新車での車両入れ換えを行うケースもある)。

 そのため、仮に東京都内の事業者の全車2ペダル化が完了したとしても、地方の事業者が保有台数のかなりの割合をAT化するにはタイムラグが生まれるのである。

 何をいいたいかというと、AT限定免許を設けて運転士不足解消に役立てようとしても、事業者によっては保有車両内でAT車が少なく、限定免許の運転士を有効活用できないということも十分想定できるのである。

 それでも、何もしないよりはいいのでは? との声もあるだろうが、それならばAT車のバスへの車両入れ換えを促進する政策もセットで進めるべきだと思う。いまでも車両購入に関する補助金制度は存在するが、限定免許所持者対策としてさらに手厚い補助金制度の創設があってはじめて限定免許創設が生きてくるように思える。

 より運転士不足の目立つ地方部は、MTかATかという前に、中扉ではなく「後ろ扉」を採用する古いバスがまだまだ現役で走っている地域も珍しくない。そのようなバスはシフトレバーが床から生えているロングストロークタイプとなり、同じMTでも直近のMTとはまた次元の違うMT車というものも存在している。

 2026年から2027年にかけて、中・大型トラック&バスにもAT限定免許が創設されるとのことなので、このタイムラグの間にAT車への入れ換えがいま以上に進むという読みもあるのかもしれないが、まだまだMT車が幅を利かしていることは容易に察しがつく。

 二種免許の実技検定試験の免除、つまり普通免許のように教習所でいわゆる「卒検(卒業検定試験)」が受けられるようになって久しいが、トラック、バスそしてタクシー運転士不足は深刻になる一方であり、特効薬にはなっていない。

 確かに今回のAT限定免許の創設もやらないよりは何かやったほうが道が開けることもあるので、それ自体は否定しない。ただ、せっかく新しいことを行うのであれば、より有効な手段となるように、省庁横断的にバックアップすればいいのだが、それがなかなかできないのが日本であり、さまざまな試みの実効性を下げてしまっているのはなんとも残念なことである。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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