壊れて当然のノリだけど現代のクルマにはない楽しさがある! 沼る可能性しかないハチマルイタフラ車 (2/2ページ)

ハチマル系ラテン車を実際に買うのはなかなかに難しい

 ここまでにご紹介した初代フィアット・パンダとシトロエンBX以外のハチマル系ラテン車の中古車は、それぞれいずれも「3台」とかしか流通していないのが直近の状況。それゆえ実際に購入するのはなかなか難しいかもしれないが、いちおう3台がしぶとく流通している「プジョー205」にはぜひ注目したいところだ。

 ご承知のとおりプジョー205は、本国では1983年に登場したコンパクトハッチバック。日本へはバブル初期の1986年に初上陸し、そのしゃれた雰囲気とGTIのホットな走りでいきなりスマッシュヒットを記録。それまで日本の一般的な自動車ユーザーの間ではほぼ無名だった「プジョー」の名を一躍有名にした。

 日本におけるメイン販売グレードだった「GTI」は、1986年の導入当初は最高出力105馬力の1.6リッター直4SOHCエンジンを搭載していたが、後期型では同120馬力の1.9リッターに。

 筆者が若かりしころ(といってもすでに1990年代)に幾度も試乗したプジョー205GTIは後期1.9リッターバージョンであり、当時の中古車マーケットで流通していたのもほとんどが1.9リッター版であった。そのため、初期の1.6リッター版GTIは「素晴らしい!」という噂は聞いていたものの、まったく運転したことがなかった。

 だが数年前、ご縁があって初めて運転した「テンロク」のプジョー205GTIは──本当に素晴らしかった。すべての動きが軽快で、なおかつ鋭く、そして力強くもあるため、普通に運転しているだけで楽しくて仕方ない。「……軽い風邪程度なら、これに乗るだけで治るのでは?」などと思ってしまったぐらいだ。

 また1.9リッターエンジンながら最高出力を100馬力に抑えた後期型である「205 SI」にも、記憶によれば1992年に試乗した。SIもまたきわめて軽快であるため(車重は1.9リッターのGTIより60kgほど軽く、タイヤサイズも後期GTIの185/55R15に対してSIは165/70 R13)、わざわざGTIを買わずともコレで十分なんじゃないか? と本気で思ったものだ。

 とはいえ、いまやプジョー205の中古車はグレードを選べる状況ではなく、「後期GTIだろうがSIだろうが、はたまたカブリオレのCTIであろうが、あればラッキー」ぐらいの勢いである。もちろんテンロクの前期型はまったく流通していない。

 だが本稿執筆日現在、某県にて走行1.1万kmの205SI(ガレージ保管車)が売りに出ているようではある。「ASK(価格応談)」であるためいくらで買えるのかはわからないが、もしもなんとかなりそうな額であるならば、ぜひ入手してみたいものだ。当該物件は5速MTではなく4速ATだが、まあいいじゃないか。そういえば筆者が1992年に試乗したSIもATだったが、それでも「このクルマは本当に素晴らしい!」と心底感じたものだ。

 また、「アウトビアンキA112」も流通台数が激少ということで──ハチマル系ラテン車を「語る」のは甘酸っぱくてステキな行為だが、実際に「買う」のは、なかなか難しい部分もあるようだ。

 そのほかでは、プジョー205とおおむね同車格だった「ルノー5」もいちおう3台流通しているが、よく見ると1台は普通のサンクではなく「GTターボ」で、残る2台はミッドシップの「5ターボ」であるため、そう簡単に買って維持できる代物ではない。


伊達軍曹 DATE GUNSO

自動車ライター

愛車
スバル・レヴォーグ STI Sport EX
趣味
絵画制作
好きな有名人
町田 康

新着情報