デジタルツールがあっても努力なくして報酬は得られない
タクシーを隔日勤務で連続20時間ほど乗務すると、月に最高で13勤務となる。ご存じのとおりタクシーの売り上げは法人タクシーならば、歩合給となり過去には所属する事業者と折半が一般的であった。最近では事業者によって歩合に差が出ているようだが、仮に運転士が売り上げの6割をもらえるとすると、1回の出番で7万円稼いだとしても単純計算では4万2000円となり、月13回乗務すると54.6万円が運転士の収入となる。ただ、乗務日には日曜や祝祭日も含まれるのが原則であり、平均営収で7万円、ましてや平均10万円など、高営収を誰でもキープできるかというと甚だ疑問が残る。
仮に「月100万円稼げた」とすると、月の総売り上げは約170万円弱が必要となる。これを13勤務で稼ぐとなると、1回の出番で平均約13万円稼ぐ必要がある。さらに20時間乗務したとすると、1時間当たり平均で約6500円を稼がなければならない。これを無理な金額といい切るつもりはないが、タクシー運転士の多くがこのような「夢の収入」を得られることは厳しいといわざるをえないだろう。
少し古くなるが2022年の東京都のタクシー運転士の平均給与は年間推計額で417万2400円となっている。月収100万円なら1200万円、その差は大きい。もちろん、タクシー運転士という仕事は働き方で大きく収入が異なる仕事である。現状では高齢運転士も多いので、「年金プラスアルファ」的な収入を見込んでいればそんなに無理な乗務はしないだろう。逆に現役子育て世代などではバリバリと日々乗務しているに違いない。
ただし、あまりにも「稼ぐぞ」などと力んで乗務すると、かえって思った収入が得られないとか、事故や乗客からのクレームが目立ってしまうこともあるようだ。
配車アプリなどがなかったころには、タクシー乗務はまさに「ギャンブル」的要素が多かった。狙いを定めると空振りが目立ったりする半面、思いもよらないところで長距離利用客(ロング客)に遭遇したりすることも多い。そこは長く乗務して経験や勘を磨いて調整できるようにすることが高営収への唯一の道ともいえたのだが、いまは配車アプリという強いツールをもつ事業者が出てきて、以前よりは高営収を得やすい環境は整っているが、そこに個人の資質などが加わらないと、思うように稼げないのもまだまだ現実となっている。
タクシーという仕事はただ道を流していればいいというわけではない。「営業センス」のようなものが必要となり、自分なりのルーティーンを決め、自分なりの乗務スタイルを確立する必要がある。それがいまどきでは、たとえばアプリ配車が出やすい時間やエリアを分析して調整するなど、いまどきの「営業努力」も必要になってくる。
あるアプリでは、アプリ配車で利用客から高いスコアを一定程度もらうと、目的地までの距離が長いマッチングを優先的にまわしてくれるようになると聞いている。航空会社のマイレージではないが、そうやってステイタスを上げると、より稼げる仕事もまわしてもらえるようになるので、収入も高めで安定していくのである。