この記事をまとめると
◾️中国車が日本車より進んでいる部分があると国産メーカー幹部も認めている
◾️車載コンピュータやEV、自動運転分野での中国車の優位性が目立つ
◾️中国政府のメーカーへの積極的な支援が中国車大躍進の最たる理由だ
EVやADASで中国車は進んでいるのか?
4月末から始まった北京モーターショー。現地を訪れた日系自動車メーカー各社の幹部からは、「明らかに日本が遅れている分野があることを認めざるを得ない」という声が挙がっている。具体的には、SDVの分野だ。
SDVとは、ソフトウェア・デファインド・ヴィークルのこと。クルマの車載OS(オペレーティングシステム)を軸として、エンタメ、電動化、自動運転技術などを総括的にデータマネージメントする仕組みを指す。
日系メーカーでも、2010年代半ば以降、いわゆるCASE(ケース)についてさまざまな研究開発を進めてその多くを量産化している。改めて説明すれば、CASEとは通信によるコネクテッド、先進運転支援システム(ADAS)を含む自動運転技術、シェアリングエコノミーなど新しいサービス、そしてBEV(電気自動車)を筆頭とした電動化だ。
こうしたCASEの個別技術については、日本、アメリカ、欧州、中国、韓国などのメーカーと部品メーカーがそれぞれ提供する技術がグローバルで併存しており、そのいくつかではいわゆる「協調領域」として基準化(規格化)が進んできたところだ。
その上で、中国メーカーは国際的な基準化(規格化)の議論に参加しながら、中国固有の方法で最新技術の社会実装を急ピッチで進めている。
中国の強みは、中国政府が自動車産業の全体に対する影響力が強く、その政策に中国自動車産業界、また地方政府が歩調を合わせることにある。
たとえば、BEVについては、電池の部材であるレアメタルの確保を中国国内のみならずグローバルで先手を打って動いている。電池の生産技術についても、海外企業との連携を深めて自前での「手の内化(てのうちか)」を加速させてきた。その結果、量産効果によってBEVのコストは一気に下がった。ただし、直近ではメーカーによってはBEVの過剰生産からくる価格競争が激化する状況に陥っている。
また、自動運転についても、ドライバーレスでの一般公道や高速道路での社会実装が進んでいる。社会におけるさまざまなリスクを政府が承知した上で、新規事業を一気に伸ばそうという考え方だ。
こうした中国自動車産業のメリットを、そのまま日本にもち込むことは中国と日本との社会状況の違いから、事実上不可能だろう。
また、中国における自動車や交通・物流に関する情報については秘匿性が強く、また政府の方針によって短期に変化することもあり得るため、日系メーカーにとって中国自動車産業の現状と今後を的確に把握することは至難の業だ。
果たして、中国自動車産業は今度、SDVによってどう進化するのか。日系メーカーはこれまで以上に、中国市場の変化を注意深く見守ることになりそうだ。