ビジョン ノイエクラッセは今後のBMWに期待を抱かせるに十分なデザイン! 斬新に見えて伝統も表現されたスタイルをデザインのプロが解説 (2/2ページ)

ビジョン ノイエクラッセは名車を見事にオマージュ

●80年代の黄金期を反映したタイムレスデザイン

 BMWはこのデザインを「クリア、エレガント、タイムレス」と謳っていますが、まさにいい得て妙。

 最初にセダン版を見たときにはその新しさに驚きましたが、同時に「懐かしさ」も強く感じられました。実際、同ブランドのデザイン責任者であるドマゴイ・ドゥケック氏は、2代目の3シリーズであるE30型がこのコンセプトカーに影響を与えたと語っているのです。

 たしかにE30型は記念碑的なモデルですが、ただ、個人的に脳裏をよぎったのは4代目のE36型のほうです。ロングホイールベースによる前後ショートオーバーハング、広いガラスエリアをもつビッグキャビン、とりわけハイデッキの佇まいはE36型そのもの。さらに、横長の大型テールランプもじつに80年代的で、ここに「タイムレス」の秘密がありそうです。

 そして「クリア」については、モノリシック(一体型表面)と称される超シンプルな面構成がそれで、これも80年代の端正なボディを彷彿とさせるもの。まるで陶器かガラスのような美しいサーフェスが、そのシンプルさを倍増しています。また、ヘッドライトとグリルを一体化したフロントフェイスの表情や細いピラー、ザックリ削ったロアバンパーなどは「エレガント」さを感じさせるところ。

 こうして見ると、ビジョン ノイエクラッセは、誰も見たことがないようなまったく新しい世界観を提示するというより、同ブランドを含め、カーデザインが強く輝いていた80年代のエッセンスを、最新の技術と知見で魅力的にまとめ上げたように感じられるのです。

●量産化でどこまで魅力を維持するかに期待

 さて、今後の関心はこの次世代ノイエクラッセの美点が市販版にどこまで反映されるかでしょう。素晴らしいコンセプトカーが量産車ではガッカリ……なんてことはよくあることですから。

 若干の不安があるとすれば、今年3月に追加されたSAV(スポーツアクティビティビークル)タイプの「X」のスタイルでしょうか。たとえば、フロントのバンパー部やサイドのホイールアーチを見ると、セダン版に比べ要素が意外に多いのが気になるところ。また、光るキドニーグリルは最近の市販モデルと同じで、「またグリルばかりが目立ってしまわないか?」なんて心配もあります。

 最近は日本車も含めシンプルなデザインへの回帰が見られますが、このコンセプトモデルの提案は「クリア、エレガント、タイムレス」という点で頭ひとつ抜けています。近年のBMWデザインはいまひとつパッとしないところがありましたが、ビジョン ノイエクラッセによって逆転ホームランとなってほしいところです。


すぎもと たかよし SUGIMOTO TAKAYOSHI

サラリーマン自動車ライター

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いすゞFFジェミニ4ドア・イルムシャー(1986年式)
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