いつしか消えた軽自動車のホットハッチの復活希望! お金のない若者を育ててくれた「安くて面白くてバカッ速」モデルを振り返る (2/2ページ)

トールワゴンにも5バルブや4気筒ターボを搭載!

 もっとも、1990年代半ばといえばスズキが初代ワゴンRを誕生させたことで、軽自動車のトレンドがハイトワゴンにシフトしつつある時代でもあった。それでも軽自動車にスポーツ性を求めるニーズは少なからずあった。

 ワゴンRのライバルとしてダイハツが生み出した初代ムーヴにおいても4気筒DOHCターボ+5速MTのグレードは設定されていたし、三菱もミニカをベースとしたフルゴネット型モデルであるミニカトッポに4気筒5バルブターボを設定していた。

 スズキもワゴンRにアルミ製3気筒DOHCターボを追加設定するなど、ハイトワゴンであってもトップグレードにおいては高性能をアピールするという時代だったのだ。

 さらに、NAエンジン搭載車においてもスポーツ指向のモデルが存在していたのが1990年代の軽自動車における隠れたトレンドのひとつ。ダイハツはミラ・アバンツァートに4気筒DOHCのNA版を載せたグレードを設定していた。さらに注目すべきが、ホンダのハッチバックモデル「トゥデイ」の最上級グレードだ。こちらには、ビート譲りのMTREC(3連スロットル)を備えた3気筒エンジンが与えられていた。トゥデイは車両重量が600kg台と軽く、軽自動車のNA最速モデルとして名を馳せた。

※画像はMTREC非搭載モデル

 残念ながら1998年に軽自動車の規格が現在の全長3.4m・全幅1.48m・排気量660ccになったころから潮目は変わっていく。たしかにアルトワークスは、そのタイミングでフルモデルチェンジ、可変バルタイ機構付きターボエンジンを与えられるなど進化したが、他メーカーからはホットハッチといえるモデルが減っていくことになる。

 スバルやホンダは軽自動車ラインアップをハイトワゴンに絞り、ハッチバックのホットモデルはオワコン状態になっていく。スズキはKeiワークスやラパンSSを登場させるなど孤軍奮闘するも、結果としてホットハッチ的な軽自動車が消滅してしまったのは、ご存じのとおり。

 いまやMT(マニュアルトランスミッション)の軽自動車を見つけるほうが難しいが、軽自動車にもスポーツ性が重視される時代があったことは覚えておきたい。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
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