軽くて強くて見た目もいいクルマの最強パーツ素材「カーボン」! 「ただし割れたら一巻の終わり」という噂について本当に修理できないのか探ってみた (2/2ページ)

ぶっちゃけカーボンって直せるの?

■主な使用箇所

「FRP」が自動車関係に使用され始めたのは想像よりだいぶ古く、最初の使用例は不明ですが、1953年に発売の初代「シボレー・コルベット」のボディはこの時点でFRP製です。おそらくレースの現場ではその少し後から使用され始めたと思われます。

 日本でも1970年代中盤あたりからレースで使われ始めたのをきっかけに、市販車用のスポイラーやフェンダーなどのカスタムパーツがリリースされていきました。

 カーボンが使われ出したのはバイクが先だったでしょうか、だいたい1940年代の終わりくらいでした。1980年代の後半にはボディのさまざまな部分に採用されるようになります。

 市販車でも高性能な車種ではボンネットやルーフにドライカーボンを採用する車種も増えています。カスタムパーツとしてはまず巨大なGTウイングあたりからでしょうか。軽量化が効く車体の末端部分で、大きなダウンフォースに耐える強度が必要なウイングには最適の素材です。

 ほかの空力パーツとしてはカナードやディフューザーもドライカーボン製が多く売られています。

■ドライカーボンの補修は可能なのか?

 そんなこんなで、今ではさまざまな部分に「CFRP」製パーツがラインアップされるようになってきましたが、その一方で「ドライカーボンのパーツは補修ができないから、破損させたら交換しかない」という声もけっこう耳に届くようになってきました。

 実際のところはどうなのでしょうか。

 結論からいうと、ウエットはもちろんですがドライでも補修はできます。ただし、ドライの場合は100%の性能は発揮出来ないことが多いようです。

 ウエットの「CFRP」は、カーボン繊維で編まれたクロスにエポキシ樹脂を染みこませて固めています。なので破損した場合は破損箇所を被うようにクロスを貼り込み樹脂で固めれば、樹脂が接着剤の役も果たし、強度的にもほぼ元の状態に戻すことができます。ただし、カーボンクロスの継ぎ目は消せないので、無塗装の場合は補修跡が残ります。

 問題のドライカーボンの場合も破損箇所にバッチをあてる方法なのでやることは同じなのですが、元々大きな釜のなかで真空引きしながら高温高圧で焼き固めることで、薄く固く作ることができているので、補修の場合もそれに近い工程をおこなわないと、単にウエットのバッチをあてただけになってしまいます。

 細かくは教えてもらえませんでしたが、部分的に真空引きをおこない、高温で焼き固める方法を施しているようです。

 この方法で補修した箇所は、実際にレースの現場で再び酷使され、しっかり負荷に耐えているということだったので、強度的にもある程度復活させられるようです。

 しかしこの補修には専用の装置や設備が不可欠で、とても素人がDIYでおこなえるものではないでしょう。補修のコストもそれなりに掛かるそうです。

 なので、思い入れのある替えの利かない部品や、ボンネットやバンパーなどの高コストな部品にはそのコストと手間を費やす意味はありますが、カナードなどの小物の場合は交換した方が早いかもしれません。

 予算と目的を考えて補修を実行するかどうかを決めましょう。


往 機人 OU AYATO

エディター/ライター/デザイナー/カメラマン

愛車
スズキ・ジムニー(SJ30)※レストア中
趣味
釣り/食べ呑み歩き/道の駅巡りなど
好きな有名人
猪木 寛至(アントニオ猪木)/空海/マイケルジャクソン

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