「運転しやすいのは?」「体力的に辛いのは?」「コスト面は?」 スーパーGTのGT500と300の違いを参戦チーム&ドライバーに直撃した (2/2ページ)

じつは空力性能の高いGT500のほうが運転しやすい?

 ——そのほか、GT500とGT300で戦略が異なるとか、GT500/GT300ならではの戦い方みたいな傾向があったりするんでしょうか?

 阿立氏:とくに変わりはないですよ。GT500にしてもGT300にしても、レース中にどこを削るか……という話になってくると、結局は“燃費”になってくるので、GT500のドライバーもGT300のドライバーもレースでは燃費を意識したドライビングを行っています。いまはGT500、GT300に特化した戦略はないですね。

 ——ちなみに参戦コストの話なんですけど、予備パーツをGT500とGT300で、それぞれ用意することを考えると同じクラスを2台にしたほうがリーズナブルになったりするんでしょうか?

 阿立氏:GT500を2台体制にするのはかなり高くなりますね。GT500はGT300と同じ金額で用意することはできないですが、GT300も車両やランニングコストが実費としてかかってきますからね。GT300を2台で戦うのも大変です。

 ——なるほど。GT500もGT300も参戦コストは大変なんですね。ちなみに、どちらのクラスも勝つのは難しいですよね。

 阿立氏:そうですね。GT500はかなり厳しい世界ですが、GT300も難しいです。BoP次第ですが、いまはGT-Rに対するBoPは厳しいので、GT300を2台体制で戦ったとしても、なかなか勝つことが難しいクラスになっています。

 以上、阿立氏にGT500とGT300の違いを解説してもらったが、実際のドライビングフィールはどれくらい違うのか?

 というわけで、昨年まで56号車「リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R」のステアリングを握り、今年は24号車「リアライズコーポレーションADVAN Z」をドライビングする名取鉄平選手にインプレッションしてもらった。

 ——昨年までGT300、今年はGT500をドライビングしていますが、何が違いますか?

 名取選手:一番はダウンフォースです。スピードも違うし、ダウンフォースが効いていることもあってGT500はコーナリングの安定性が高い。フォーミュラに近い感覚のあるGT500に対して、GT300車両は車重が重いこともあってコーナリングがまったく違います。

 ——車両重量がかなり違うみたいですね。

 名取選手:GT500は軽いですからね。イメージ的には軽いスポーツカーとSUVぐらい違うので、動かし方も変わってきます。GT500はスーパーフォーミュラライツに近い感じです。

 ——コントロールしやすいのはGT500ですか?

 名取選手:クルマだけでいえば、そうかもしれませんが、タイヤの要素も絡んできますからね。KONDO RACINGはGT500もGT300も同じヨコハマタイヤなんですけど、特性が違います。昨年までGT300で使っていたタイヤはかなり強くて安定性が高いんですけど、GT500のタイヤに関しては課題も多いので、タイヤやライバルを含めて考えると一概にはいえない感じです。

 ——GT500とGT300は車速が違っていて、レースでも5周ぐらいしたらGT300がバックマーカーとして現れてきますよね? ドライバーとしては、GT300に乗っていてGT500を先行させることのほうが難しいですか? それともGT500に乗っていてGT300をパスしていくことのほうが難しいですか?

 名取選手:個人的にはGT300に乗っていて、GT500を先行させることのほうがラクでしたね。クラス違いでも同じクラスでも、レースでは「抜く」ほうがリスクを取る必要があるんですけど、GT500は常にGT300を抜いていかないといけないので、その都度、リスクを取らないといけない。バックマーカーをパスするために、タイムをロスしたくないので、ギリギリのアプローチをするんですけど、そのぶん、接触のリスクは増えるし、逆にマージンを取りすぎるとライバルに追いつかれたり、引き離れたりするので、毎回、GT300を躱すことのほうがメンタル的にはきついです。

 ——なるほど。しかも、GT300車両は速くてなかなか抜けなかったりしますよね?

 名取選手:そうなんですよね。それにGT300はGT300でトップ争いをしていたら、GT500が来ていても自分のバトルをしないといけませんからね。そこに関しては、GT300としても難しい部分だと思います。

 ——GT500とGT300はそれぞれで難しいんですね。

 名取選手:GT500とGT300にはそれぞれ難しさもありますし、GT300にしかない面白さ、GT500にしか面白さがありますね。

 ——GT300、GT500ならではの面白さは?

 名取選手:GT300でいえば、タイヤメーカーのパフォーマンスが拮抗しているとことですかね。あとは車種が多くて性能も調整されているので誰が勝つのかわからない部分が面白いと思います。GT500の面白さはスピードです。ハコ車では世界一のスピードといわれているほどの速さですし、あのパフォーマンスはGT500だけだと思うので、そこはやっぱり面白いですね。

 ——ちなみにGT500とGT300は体力的にあんまり変わらないんでしょうか?

 名取選手:とくに変わらないですかね。GT500になってツライ……とかはなかったですね。GT500の乗り始めがセパンのテストだったので暑さ的にしんどかったんですけど、そこからオフシーズンにトレーニングを行ったので体力的には問題はありません。むしろ、タイヤのマネジメントに神経を使いますね。メンタル的に厳しそうだったので、少しでも余裕を持てるように週3回ぐらいのペースでトレーニングを行ったところ、いまでは体力的にもメンタル的にも余裕が出てきました。

 ——GT500に移行してから気をつけていることはありますか?

 名取選手:ブレーキングですね。GT300はABSが付いていて、ブレーキをドカンと踏んでもロックすることはあまりないんですけど、GT500はABSが付いてないので、ブレーキングで攻めすぎるとロックアップしてしまいます。今年はレギュレーションが変わって2回の予選と決勝でもそのタイヤを使わないといけないので、タイヤを守りつつアタックしないといけない。昨年までは予選でタイヤマネジメントを意識したことがないので、そこに気をつけていますね。

 以上、GT500とGT300の違いをチームおよびドライバーに解説してもらったが、それぞれに違いもあれば共通点もあったりで、GT500、GT300ともに魅力的なクラスになっている。


廣本 泉 HIROMOTO IZUMI

JMS(日本モータースポーツ記者会)会員

愛車
スバル・フォレスター
趣味
登山
好きな有名人
石田ゆり子

新着情報