BEV化が着々と進む海外の路線バス
車体が極端にスクエアなので、車内も当然極端にスクエアな空間が広がっていた。なかなか先進性を感じる車内なのだが、一部降車ボタンが日本の路線バスのものの20年以上前ぐらいの昭和を感じさせるアンバランスなものがついていたことに驚かされた。
「BEVだから先進的で未来志向」というつもりはないが、多くのメーカー、とくに新興メーカーではそのイメージの強いモデルをラインアップさせている。台北市ではすでにFOXTRON以外のBEV路線バスも走っているが、いずれも既存のICE(内燃機関)の路線バスのイメージを引きずっており、筆者以外でもFOXTRONバスのデザインに目が留まるはずである。
日本ではBEVではなくFCEV(燃料電池車)路線バスとなる「トヨタSORA」が都市部を中心に走り出している。FOXTRONよりさらに挑戦的で未来志向なデザインとなっており、たとえば東京を走るバスがすべてSORAならば、街の風景はかなり変わるはずである。
それを実現しようとしているのが韓国の首都ソウル市。ソウルでは路線バスのBEV化がかなり進んでおり、当たり前のようにBEV路線バスがやってくる。そして、複数メーカーの車両がSORAに近いデザインで統一されている。
韓国の路線バスは運転士が「武闘派」だったりしてかなり荒っぽい運行をしていたこともあり、観光客にはなかなか使いこなせない乗り物であったが、車両電動化とともに使いやすさも各段に向上。筆者が2023年に乗った限りでは運転士からも武闘派色はほぼ消えていた。
韓国ヒョンデには、現状ではBEVはなくディーゼルエンジンを搭載するが、それこそコンセプトカーをそのまま市販モデルにしたような「スターリア」というミニバンがある。そして、ソウル市内を見ているとこのスターリアの救急車や幼稚園児バスなど「はたらくクルマ」もたくさん走っている。
ヒョンデの乗用車はかなりエッジの利いたデザインのものが多く、グレンジャーやソナタがタクシーやパトカーなどでも走っている。
そんなクルマが多く街を走っているので、日本車はもともと手堅いクルマ作りをするので仕方ないのだが、ソウル市内の方が「より先進的な街」に見えてくる。「先進的」などあくまで個々人の主観の問題となるのだが、韓流ドラマなどが好きな人の間では、韓国の方がより先進国に感じる人が多いというのも、知らず知らずに劇中のそのようなシーンを見て感じているのかもしれない。
デザインうんぬんは抜きにしても、中国広州市では2019年に市内の路線バスのBEV化が加速した。2019年に広州市内を歩いていると、クルマ由来のノイズというものがかなり減っていた。そのなかでBEV路線バスだけではなく、BEVタクシーも増えていたので、クルマ由来のノイズがかなり低減され、街を歩く人たちの話す声が目立っていたのである。中国の人の話す声は大きいので、歩いているとクルマ由来の騒音よりも、そっちのほうが気になってしまった。
見た目のデザインはあくまで個々人の主観とはなるものの、筆者のような凡人から見れば、確かにBEVの多くはエクステリアだけではなく、インテリアも先進的でワクワクしてしまうものが多い。割高なBEVを買ってもらうためには、そのような「仕掛け」は必要とも考えているのだろう。
海外の街を歩いていると、見える風景や聞こえるものが日本とは異なることに驚きを感じる。「100年に一度の変革」というものはこうゆうものなのかなあと筆者は感じている。