メルセデス・ベンツやBMWなら数世代前のモデルが狙い目
次なるドイツ精神は「誇り高い」ということになるだろう。まぁあえて悪くいうなら「尊大」ということで、その昔は大日本帝国も三国同盟ではいろいろと苦労したようだ。また、ドイツの自動車メーカーとコラボした経験を持つ国産自動車メーカーのエンジニアからは、「彼らのプライドの高さには閉口した」的な話をしばしば聞く。
そんな、良くも悪くも誇り高く尊大なドイツ精神を日本において感じたいならば、「ベンツ」に乗るに限るだろう。メルセデスというよりもベンツと呼びたくなるあの偉そうな感じというか何というかは、国産車ではなかなか感じ得ないものである。
真のドイツ的尊大さを味わうには、現行世代のEQSセダンやメルセデスAMGのG63あたりに乗るのが一番だが、それらはさすがに総額100万円以下で買うのは不可能。ならば、次善の策としてW204型Cクラスの後期型を選ぶのがちょうどいい落としどころだろう。
W204こと先々代のCクラスは、前期型においてはいまひとつ質感に乏しく、「ドイツ的尊大さ」はイマイチ感じにくいものだった。だが、2011年5月以降の後期型は、品質、質感ともに向上。さすがに前述したEQSセダンやメルセデスAMG G63ほどの尊大さを味わうことはできないが、その一端を垣間見ることはできる。そして総額90万円台にて、C 180またはC 200アバンギャルドのAMGスポーツパッケージが見つかるはずだ。
そして、お次に堪能してみたいドイツ精神は「冷血な感じ」だろうか。
といってもこれは真のドイツ人っぽさでは決してなく、単に戦争映画やアニメの影響を受けてのものである。血も涙もない、そして笑顔を見せることもいっさいない、デスラー総統っぽい感じの人物像だ。……なんてことをいっていると、在日ドイツ大使館からクレームが入りそうだが、「勝手な妄想、大変申し訳ございません」と陳謝したうえで先へ進もう。
そんなデスラー総統っぽい雰囲気を日本において堪能したいのであれば、選ぶべきブランドはアウディに限る。あのクールな世界観は、日本的な温情とは真逆の冷血なニュアンスに満ちており、いかにも素敵だ。
そして総額100万円以下の予算でアウディを入手するとなると、先代A4アバントの後期型がいちおうベストかと思われるが、ファミリーユースにも向いているステーションワゴンでは、デスラー総統っぽい冷血さが若干減じてしまう。
そのため、ここはクールな2+2クーペである「アウディTT」でどうだろうか。現行型はさすがに総額100万円以下では無理だが、先代であれば、1.8または2.0 TFSIのまずまず良好な物件を、総額90万円台で見つけることができるだろう。
最後に堪能してみたいドイツ人精神は「しっかり長期休暇を取る」という部分だ。
平日の夜は冷たい食事(Kaltes Essen)をひたすら繰り返す彼の地の人々であるが、バカンス(ドイツ語ではUrlaub)となれば、仕事のことなどお構いなしにばっちり長期有給休暇を取り、どこか遠くへと出かけていく。たった1日か2日の有休を取るのもためらわれることがある日本社会に暮らす身としては、ドイツ人労働者の「有休平均取得日数は30.9日で、取得率はほぼ100%!」という力強い労働マインドあるいは休暇マインドを、一度見習ってみる価値はあるはずだ。
そして、そんな休暇マインドを感じさせるドイツ車といえば、フォルクスワーゲンのトランスポーターあたりが適任なのかもしれない。だが、総額100万円以下では無理であり、なおかつトランスポーターを買っても有休の平均取得日数がわずか10.9日で、平均取得率も62.1%にすぎない日本では、あまり使い道がない(※数字は厚生労働省「令和5年就労条件総合調査の概況」より)。
となれば、優雅でスポーティなオープン2シーターであるBMW Z4の先々代モデルを総額90万円前後で購入するのはいかがだろうか。
ソフトトップを下ろして、どこかへひとりあるいはふたりで日帰り旅行に出かけてバカンス気分にひたるというのが、ドイツ精神を味わううえではちょうどいい選択となるのかもしれない。