バンコクにおけるBEVタクシーの普及動向に注目したい
とはいっても、まだまだ街なかを走るタクシーは、トヨタ・カローラアルティスが圧倒的に多い。タイのタクシーのカローラアルティスは天然ガス使用であり、トランクにガスタンクを備えているので、大きめなスーツケースを1個入れると何も積めなくなっていた。そのため、本来なら4人まで乗車できるトヨタ・カローラアルティスであるが、外国人旅行者が空港からの移動で荷物を積むことを考えると2名が限界。
その点、前述したBYD e6はMPV(多目的車)であるし、MG EPはステーションワゴン、AION ESはセダンながらトランクにガスタンクがないので、積載性能でもトヨタ・カローラアルティスよりも優れることになる。
BEVのタクシーは、ICE(内燃機関)の同クラスのタクシー車両よりも運転士がタクシー会社から車両を借りる際の料金は若干高めのようだが、燃料費など諸経費は運転士負担となるので、燃料費としては天然ガスよりも電気代のほうが安く抑えることができる。経費負担面のメリットはいまのところそれほどでもないようだが、政府もタクシー車両の電動化には積極的な姿勢を見せているようなので、今後の普及次第ではメリットが大きくなっていくかもしれない。
「それにしても、AION ESのタクシーは2024年に入ってから急速に多くなってきました。とはいえマッチングアプリでタクシーを呼んでAIONがくることはまだ少ないので、AIONがくるとワクワクして乗ってしまいます」とは現地事情通。
筆者もライドシェアアプリでタクシーをマッチングしたとき、AION ESがマッチングされたことがある。さっそく車内に乗り込むと、車内はカローラアルティスよりやや大きく感じた。ドアパネルやシートなどは「最近の中国車おそるべし」といった感じで不満はない。フリート専用であるらしく、計器盤はスピードメーターなどがアナログ式となっており、フリート専用車としての割り切っていると感じた。
ただ、残念だったのが、市街地なのでそれほど速度が高くはなくても、走行中は何か「ザラザラ」とした印象が伝わり、乗り心地がいまひとつであったことだ。かつて、インドネシアでBYDシールに乗車する機会があったのだが、そのときも同じような「ザラザラ」としたものを感じたのを思い出した。翌日はカローラアルティスのタクシーに乗ったが、ザラザラとしたイメージはなく、AION ESよりは明らかに乗り心地がよかった。
調べてみるとAION ESのサスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リヤがトーションビームなのに対し、カローラアルティスはフロントがマクファーソンストラットでリヤがダブルウイッシュボーンであった。サスペンション形式の違いもあるのだろうが、まだまだ中国メーカーは足まわりの煮詰めが甘いのかもしれない(とくにセダン系は苦手なのかもしれない)。この辺りを中国メーカーがどのようにブラッシュアップしてくるのかも気になるところであった。
次にバンコクへ出かけるのは、2024年12月を予定している。まだ少し先のことではあるが、中国系BEVタクシーの普及がどこまで進んでいるのか、日本と異なりスピード感をもって社会が進化している国だけに見える風景がどうなっているのか、非常に楽しみである。