デビューから2戦連続で表彰台を獲得
——開幕戦の岡山でデビューしてからはシビックタイプR-GTの開発も一段落したんでしょうか?
徃西氏:GT500のマシンは各サーキットはもちろん、その日のその状況に合わせて、アジャストしなければならないので、高度なセッティング技術が必要となります。ベースの形状や空力のパッケージは開幕前に登録しているので、その部分は触れませんが、セッティングでベストな状態に合わせ込まないといけないので、これからはその部分の勝負になってくると思います。
——先ほどシビックタイプR-GTは空気抵抗が少ない……と話していましたが、セッティングを含めて、第2戦の富士スピードウェイはいかがでしょうか?
徃西氏:富士スピードウェイは最終スペックに近い形で合同テストに参加できているので、各チームがうまくまとめてくれたら、しっかりとしたレースができると思いますよ。
佐伯氏:岡山の合同テストにはホモロゲーションを取得する前の状態で参加していましたが、その状態でも本番のレースではそこそこ戦えましたからね(注:100号車「STANLEY シビックタイプR-GT」が予選3位、決勝も3位で表彰台を獲得)。そのときよりもよくはなっていると思うので期待したいところです。
徃西氏:岡山はシビックタイプR-GTにとって不得意なコースなんじゃないかと思えるほど、テスト段階ではライバル車両に遅れをとっていましたからね。蓋を開けてみたら最後の性能アップ効果もあり、上位争いできるチームもあったので予想よりも良い結果でした。
佐伯氏:富士も含めて、どのサーキットでも勝ちたいところですが、スーパーGTはハンディ戦なので、一度勝つと厳しい状況になりますからね。それでもシビックタイプR-GTの2台か3台かが最終戦のもてぎまでチャンピオン争いにできるような形になっていればいいですね。
以上、簡単にシビックタイプR-GTについて触れてきたが、第2戦の富士では17号車「Astemo シビックタイプ R-GT」が予選でトップタイムを叩き出し、ポール・ポジションを獲得したほか、決勝でも17号車が3位に入賞し、表彰台を獲得した。
というわけで、続いて17号車「Astemo シビックタイプR-GT」のステアリングを握る塚越広大選手を直撃。
——まず予選1位、おめでとうございます。調子が良さそうですね。
塚越選手:シビックタイプR-GTに変わってクルマを煮詰めていくなかで、なかなか速く走らせることができなかったし、開幕戦の岡山は不運なアクシデントで1周もできずに終わっていましたが、第2戦を前に見直したことで走り始めからフィーリングがよくセットアップもうまくいきました。予選のQ2はプレッシャーがありましたが、クルマの調子がよかったので悪くないアタックができました。
——決勝の3位はいかがですか?
塚越選手:ポールポジションからのスタートだったので、一番で帰ってきたかったんですけど、ペース的には3号車(Niterra MOTUL Z)に及んでなかったですし、ピットストップの部分で順位を下げたこともあったので、次戦に向けて準備したいと思います。
——決勝のロングランはどうでしたか?
塚越選手:岡山を走れなかったので初めて決勝を走りましたが、ペース的には悪くはなく、3位で表彰台を獲得できたことはよかったと思いますが、ライバルに離されたので、これをベースに合わせ込んでいきたいと思います。
——ところで、シビックタイプR-GTはいかがですか? やっぱり、NSX-GTとは違いますか?
塚越選手:シャシー、モノコックは同じなので景色は変わらないんですけど、やっぱりシビックタイプR-GTになったことで空力が変わりました。
——プロジェクトリーダーの佐伯さん、エンジニアの徃西さんも空気抵抗が少ない……といっていますが、その辺りはドライバーとしても体感としてわかるモノなのでしょうか?
塚越選手:NSX-GTはダウンフォースが効いていてコーナーでも鋭い走りができていましたが、その一方でストレートは苦手でしたからね。その点、シビックタイプR-GTは克服していると思いますし、コーナーでもNSX-GTと同等の走りができると思います。まだセットアップを煮詰めている段階ですが、感触としてはマイルドで運転しやすい感じになっています。
——シビックタイプR-GT、ここのコースは行けそう! みたいな手応えはありますか?
塚越選手:富士が得意であって欲しいですよね。あとは鈴鹿もテストの感触はよかった。逆にNSX-GTはSUGOやオートポリスで速いイメージがありましたが、シビックタイプR-GTはどうなのかが楽しみです。
——ところで市販モデルのシビックタイプRにも乗られていると思いますが、レーシングカーと共通する部分みたいなのはあるんでしょうか?
塚越選手:駆動方式も違うし、空力も違うので比較てきませんが、ドアノブの形状とかは似ているのでクルマへ乗り込む時は親近感があると思いますよ。NSXよりシビックタイプRのほうがビジュアルは近いと思う。
——シビックタイプRのオーナーさんに「GTのここをみて欲しい」みたいなことはありますか?
塚越選手:オーナーさんではなく、HRCにいいたいことなんですけど、ドアノブでもいいので市販車と同じパーツを入れて欲しい。そういったレーシングカーに近づけるものがあると応援しやすいと思いますし、何よりクルマ好きとしてロマンがあるので、ぜひ、HRCには取り組んでもらいたいですね。
——ちなみに市販のシビックタイプRはレーシングドライバーが乗っても楽しいですか?
塚越選手:そうですね。完成度が高いです。FFなんですけどフロントの入りがいいし、リヤグリップもいい。それにパワーもある。サーキットも街乗りも楽しいですよ。
以上、シビックタイプR-GTについてクローズアップしてきたが、パフォーマンスが高く、デビューから2戦連続で表彰台を獲得。すでに予選ではトップ争いを支配しつつあるだけに、マシンの熟成が進めば決勝でもトップ争いを左右するに違いない。