この記事をまとめると
◾️円安が進行している
◾️国産自動車メーカーには円安が利益に繋がるケースがある
◾️一般ユーザーにとっては新車価格やエネルギー代の向上など、円安は痛手となることが多い
国内自動車メーカーにとっての円安のメリットとは
1ドル160円が当たり前のような時代に入った。日銀が為替介入したとかしないとか、連日大きなニュースになっている。そんなドル円レートで、多くの人が感じるのは海外旅行時のデメリットだ。ハワイのマクドナルドでビッグマックなどを何気なく買って、払ったドルを円換算してみたらなんと3000円を超えていたとか、ニューヨーク・マンハッタンのホテルで1泊5万円以下で部屋をみつけるのが大変になったとか……。
また、日本国内での日常生活では、スーパーマーケットでの買い物でオリーブオイルが急騰したほか、多くの商品の値上げが目立つ。スーパーマーケットの仕入れ価格に原材料価格と物流コストの上昇による影響が出ているのだ。
こうした円安のデメリットは、海外からの日本への観光客にとってはメリットとなり、インバウンド需要がコロナ禍以降に急上昇している状況だ。
一方、自動車メーカーの立場では、円安はメリットとデメリットが併存している。
メリットは、当初設定していたドル円レートに比べて円安の幅が大きいことで、結果的に営業利益に対してプラス要因となり、決算内容としても上々で、自動車大手の春闘では賃上げに対して満額回答が相次いだ。
ところが、原材料費や物流コストについては、スーパーマーケットの仕入れと同じように自動車メーカーにとっても円安はマイナス要因となる。とくに、自動車部品メーカーにとってはこれらマイナス要因が経営への影響が大きく、賃上げに対して厳しい対応をせざるを得ない場合もみられる状況だ。
その上で、自動車メーカーとしては、円安によるプラスとマイナスの両面をバランスさせる必要がある。その結果、新車価格上昇の流れになっている。
また、ガソリン代や、EVやプラグインハイブリッドで使う電気代など、エネルギーのコストについても、昨今の円安によって上昇基調にある。このように一般の自動車ユーザーの視点では、円安で新車が高くなったり、クルマの維持費が高くなる傾向があることはけっして喜ばしいことではない。
1ドル90円のような円高で、アメリカなどで販売されている日系現地モデルを逆輸入するメリットがあった時代に再び戻ることは当面は難しいだろう。
いずれにしても、新車にしろ中古車にしろ普段の生活のなかでは高額商品であるクルマについて、ドルに対する円高・円安という為替変動は、一般ユーザーにとって大きな影響が及ぶということだ。スズキの鈴木 修相談役は社長・会長時代、記者から円安や円高の状況についてコメントを求められると、よく「為替は水物(みずもの)」と答えていたことを思い出す。