サーフボードもクルマもナンパの小道具! バブル期に湧いて出た「陸サーファー」に愛されたクルマ4選 (2/2ページ)

プロ(!?)とも呼べる陸サーファーまで出現

 もっとも、ハイラックスサーフはそれなりの値段。そこまでお金は出せない「陸サーファー」に注目されたのが、これまた本物のサーファーにも愛された日産サニー・カリフォルニア。アメリカンステーションワゴンをスケールダウンしたようなルックスで、初代は1979年に登場。

 その車名のカリフォルニアの響き、中古車でも入手しやすいことから「陸サーファー」が黙って見ているわけもなく、中古の絶対に使わないサーフボードをルーフに積んで、サーファーを気取ることができたのである。

 一方、小金持ちの若き「陸サーファー」の神器として人気だったのが、スウェーデンからのガイシャ、ボルボ240エステートである。そのセダン版は欧州ツーリングカーレースに参戦し、空飛ぶレンガと称され、80年代にレースを席捲。240シリーズはその絶大なる安全性を知るお医者さんにも愛用されていたが、そのワゴン版はアウトドア派から本物のサーファー、カメラマン、カタカナ商売のヤングエグゼクティブ、そして「陸サーファー」にまで絶賛大人気。日本におけるボルボ人気の火付け役ともなったのだった。

 当時、知り合いにもボルボ240エステートに乗る、アパレル関係に勤める友人がいたのだが、彼もまた「陸サーファー」。都会の日焼けサロンに通い、ルーフに知り合いからもらったボロボロのサーフボードを、”外れない、盗まれないように固定”していたのは当然として、広大なラゲッジルームにウェットスーツを吊るすなどの芸の細かい演出まで怠らなかったのだから、ある意味、プロの「陸サーファー」と呼ぶべきだろうか。

 では、今、「陸サーファー」を最大限に演出できるクルマは何か。最新のSUV、クロスオーバーモデルではしっくりこないのはさておき、さすがに当時のファミリア、ハイラックスサーフを探すのは難しい。もう30~40年前のクルマだからだ。しかし、当時の「陸サーファー」ブームから10~20年後に登場した、ある1台なら、今でもスタイリッシュかつ、今日のアウトドアブームにもめっぽう似合い、デザイン的に決して古臭くなく乗れたりする。

 その1台とは、2003年から2005年に日本でも販売された、ホンダがアメリカから逆輸入していたホンダ・エレメントである。何しろ「西海岸のサーファー御用達」として企画された、まさにサーファーのためのRV(レジャービークル)なのだ。全長は10フィートのサーフボードを積むことを前提にしたもので、観音開きのドアも大きな特徴の、海に似合いすぎるデザインが特徴だった。

 もちろん、今では中古車でしか手に入らず、ある意味短期間しか売らなかった絶版車だけに、カーセンサーで探しても全国で80台ぐらいしか見つけられない。程度がいいとプレミアムな値付けにはなっているものの、今、乗っても、繰り返しになるが、古臭さなど皆無のSUVデザインが光る。先日も六本木で見かけたが、今日のクロスオーバーブームの最中でも第一線に見える存在感、カッコよさを感じられたほどだ。その本場北米仕様の左ハンドルモデル(中古車の一例として10.2万キロ走行、支払総額200万円)に至っては、令和のプロ「陸サーファー」御用達車としても通用する希少性があったりする。

 とはいえ、「陸サーファー」御用達車がモテ道具になり、「陸サーファー」がモテたのは遥か昔のハナシ。今はそもそもクルマでモテる時代ではなく、「陸サーファー」を気取ってモテようなんて考えてはいけない。「陸サーファー」伝説は、男女の関係が今では想像もできないほど開放的ではじけていたよき時代、バブル期を含む80~90年代の昔話なのだから。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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