サーフボードもクルマもナンパの小道具! バブル期に湧いて出た「陸サーファー」に愛されたクルマ4選 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■1970年代〜80年代は日本でサーフィンがブームとなっていた

■バブル期にはサーフィンはしないが、雰囲気だけ楽しむ「陸サーファー」が存在

■「陸サーファー」たちに人気だったボードを飾るためのクルマを紹介

バブルの街を彩った陸サーファーが愛したクルマ

 日本でサーフィンブームが盛り上がったのは1970年代とされている。西海岸のライフスタイルをテーマにした雑誌「ポパイ」の創刊も1976年であり、その後、アメリカでサーフィン映画「ビッグウエンズデー」も公開され、サーフィンブームは一気に加速したのである。

 80年代にかけて日本でも本気でサーフィンを楽しむサーファーが増殖したのはもちろんだが、それと同時に話題になったのが、海でサーフィンはしないが、街やリゾート地でサーファーを気取る、通称「陸サーファー」の出現だった。サーファーを気取ればモテる……ということだったのだろう。

 当然、実際のサーフィンとは無縁の「陸サーファー」の演出に欠かせなかったのが、サーファーを気取れるクルマにほかならない。いい換えれば、小道具(大道具!?)としてのクルマなしに「陸サーファー」にはなれないということだ。

 その代表格は、じつは若かりし筆者も買ってしまった、栄えある第1回日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)を受賞した5代目BD型ファミリア(1980年~)である。どこかVWゴルフを意識したFF化されたハッチバックモデルの人気は絶大で、前席フルフラット化も可能。筆者もそうしたように、輸出仕様のMAZDA 323のエンブレムや、まだ認可されていなかったドアミラー装着などによるドレスアップのベース車としても大人気。いや、日本のドレスアップブームの火付け役ともなった1台なのだ(筆者は当時、自動車専門誌でドレスアップの担当をしていた)。

 とくに赤いボディが人気で、「陸サーファー」はダッシュボードの上に芝生を敷き、小さなサーフボードや椰子の木を置くなどして、海、サーフィンを演出。もちろん、ルーフには絶対に使わない(!?)サーフボードを固定する、これぞ「陸サーファー」スタイルが大流行したのである。余談だが、筆者のファミリアはブラックボディのスポルトというグレードで、欧州仕様にドレスアップしたほか、タコ足、マフラーチューニングも行っていて、決して「陸サーファー」を目指したわけではない。

 1990年代に入ると、その「陸サーファー」ブームはさらに熱を帯び、本物のサーファーとともに「陸サーファー」にも注目されたのが、2代目トヨタ・ハイラックスサーフ(1989年~)だった。その車名からしてサーファー御用達だが、波に乗らず、都会に渦巻く波に乗ってモテたい「陸サーファー」にはうってつけの1台。ルーフに、絶対に使わないサーフボードを乗せ、ちょっと日焼けし、アロハシャツでも着ていれば、誰がどうみてもクルマとの関係からサーファーに見えることは間違いなし。

 六本木の早朝、ディスコ帰りで始発を待つイケイケ女子に「これから海に行かない……?」とナンパするにも好都合。「サーファーに悪い人はいない」という女子の勝手な思い込みにつけこんだ不届きな輩も少なくなかったのだ。とくに1990年に加わった3VZ-E型、3リッターV6エンジンを積むモデルはハイラックスサーフとして初の3ナンバーであり、3ナンバーに憧れる「陸サーファー」、そして女子の人気は爆上がり。その後ハイラックスサーフは続々と特別仕様車を発売し、夏仕様、冬仕様まであった、若者に絶大なる人気を誇ったSUV(当時はRVと呼んだ)となったのである。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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