極端なEV普及の目標は次々と修正! それでも国産メーカーのEVラインアップを増やすべき理由 (2/2ページ)

まずはEVのラインアップを増やしていくことが大事

 環境対応で大切なことは、二酸化炭素の排出ゼロを目標に据えた上で、そのときどきの状況に適した技術を使いながら二酸化炭素排出量を減らすことだ。たとえば水素を燃焼させれば二酸化炭素は基本的に排出されないから、「内燃機関はダメ」という否定もあり得ない。さまざまな可能性を視野に入れて「否定しないこと」は、技術を捉えるときの基本だ。

 そして、トヨタは2021年末に「2030年には電気自動車を世界で350万台販売する。この内の100万台は上級ブランドのレクサスで、北米・欧州・中国市場はすべて電気自動車とする」という目標を公表した。

 2023年度におけるトヨタの世界販売台数は、レクサスブランドを含めて約1031万台だから、2030年の目標になる350万台はいまの販売総数の3分の1だ。トヨタ車は充電の困難な地域でも販売されているから、その顧客を見捨てることはできない。トヨタは最後までエンジン車を作り続けるメーカーかもしれない。

 ホンダは2040年までにすべての新車を電気自動車と燃料電池車にする目標を掲げた。これはエンジンの廃止を意味する。クルマ好きにとって、ホンダは吹き上がりの優れた高性能エンジンに特徴のあるメーカーだ。エンジンの廃止は寂しいが、電気自動車の時代になると、モーターの回転感覚でホンダの個性を表現することも考えられる。

 そしてトヨタは1997年、ホンダも1999年からハイブリッドを開発しており、モーター駆動に対する知見も豊富だ。それなのに現時点では、電気自動車の品ぞろえが海外メーカーに比べて乏しい。

 前述のとおり、電気自動車に偏った世論は修正されつつある。今後は両社ともに、必要なときに適切なタイミングで電気自動車を投入すると思うが、そろそろラインアップを積極的に増やすべきだ。

 とくに日本は、総世帯数の約40%が集合住宅に住むため、自宅に充電設備を設置しにくい。電気自動車の普及は、複数の車両を所有する一戸建て世帯のセカンドカー需要を中心に進むから、軽自動車やコンパクトカーのサイズに抑えることが大切だ。

 日本の使用事情に合った電気自動車を求めやすい価格で投入する必要がある。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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