東南アジアではピックアップトラックは重要車種
ピックアップトラックといえば、アメリカンブランドの得意分野でもあるが、GM(ゼネラルモーターズ)はすでに市場から撤退しているし、ステランティスグループのアメリカンブランドにおいて、タイ市場に参入しているのはジープブランドだけとなっている。唯一、ピックアップトラックをラインアップしているフォードも、ショー会場ではSUVのエベレストしか展示していなかった。
ピックアップトラックの2強が会場でBEVを展示するなか、タイ市場では勢力を伸ばし続ける中国メーカーでも動きがあった。GWM(長城汽車)がPOERというモデルを市場投入してきたのだ。当然BEVだろうと近寄ると、2リッターターボエンジンベースのHEV(ハイブリッド車)であった。BEVかHEV化という前に、リヤゲートが1台で2通りの開き方ができることに注目が集まっていた。中国車らしい趣向ともいえよう。
すでにタイではMGがエクステンダーというピックアップトラックをラインアップしているが、こちらは2リッターターボディーゼルエンジンを搭載している。
たとえばトヨタは、タイのようにピックアップトラックの需要の多い北米市場だと、ピックアップトラックにハイブリッドユニットを搭載している。
しかし、タイではトヨタも含め日本メーカーは得意のHEV化を通り越してBEVタイプのピックアップトラック導入に熱心に見えるのに対し、中国メーカーはピックアップトラックに限れば、BEVには慎重な姿勢を見せているように思える。地方部で売ろうとすれば、GWMやMGの選択肢は現実的に思える。しかし、すでにとくに地方部で圧倒的なシェアを誇るトヨタやいすゞにしてみれば、BEVのピックアップトラックは都市部などでの新規ニーズ開拓という位置付けとなっているのかもしれない。
新車販売市場全体を見ても、タイ国内の新車販売シェアは日本メーカーが7割台を維持している。そのなかでピックアップトラック市場はほぼ日本メーカーで占められているといっても過言ではない。そのカテゴリーへ、あえてモデルを投入する中国メーカー。報道ではBYD(比亜迪)は、年内にもBEVのピックアップトラックをグローバル市場に投入予定としている。欧米先進国市場では政治的対立もあり、規制強化など中国車に対する風当たりが強くなかなか思うように売ることができないためか、東南アジア市場を中国メーカーは重要視している。
BYDもその東南アジアを本格的に攻めるのには、ピックアップトラックは必須ツールと捉えているのかもしれない。MGやGWMが慎重姿勢を見せるなか、BYDがBEVタイプのピックアップトラックを、どのようにタイを含む東南アジアで展開していくのか、興味深く登場する日を待っている。