この記事をまとめると
■かつて国産車市場では欧州仕様なるクルマが流行っていた
■各自動車メーカーが足まわりや外観を通常モデルとは変えた仕様でリリースしていた
■欧州仕様なるクルマに実際に乗ってみるとあくまで「雰囲気止まり」なモデルが多かった
かつて一世を風靡した”ユーロ”なクルマたち
かつて、国産車に”欧州仕様”的なネーミングを施した特別仕様車がマニアの人気を集め、ちょっとしたブームとなったことがあった。そのネーミングは「トヨタ・ヴィッツU”スポーツエディション”」、「スバル・レガシィ ブリッツエン」、「ホンダ・アヴァンシア ヌーベルバーグ」、「日産 パルサーミラノX1」などだ。そのほとんどは欧州仕様が存在し、日本仕様とは異なる欧州仕様のエッセンスを取り入れた和製ユーロモデルも存在したのだが、ネーミングだけ欧州っぽくしただけのなんちゃって欧州風仕様もあった。
まず、比較的本格派の和製ユーロモデルを紹介すると、1999年10月にデビューしたトヨタ・ヴィッツU”スポーツエディション”がある。もちろん、ヴィッツは欧州でも販売されるトヨタのドル箱コンパクトカーだが、“ユーロスポーツエディション”はUグレードのスポーツパッケージオプションとして、1.3リッターVVT-iガソリンエンジン(2NZ-FE)を搭載するとともに、操縦性・高速走行安定性により重点を置いたユーロチューンドサスペンションを採用。ヴィッツでも欧州仕様的な走りを楽しみたいユーザーに向けた新設定モデルであった。
※画像は通常グレード
なにしろ欧州では一般的な5速MT車を用意し、ボディ剛性の高さ、硬めながら路面を確実に捉えるサスペンションチューニング、前後スタビライザーと専用アルミホイールの装着など、見た目はほぼヴィッツそのものにして、快適性を大きく失わずにスポーティな走りのテイストを実現した和製ユーロモデルであり、それで当時の価格は100万円台前半だったのだから、欧州テイストのあるコンパクトカーをリーズナブルに手に入れたいユーザーにとっては格好の1台だった。
いやいや、もっとずっと本格な和製ユーロモデルというべきモデルがあった。それは歴代レガシィのなかでもっとも希少であり、ファンに人気だった限定モデルのドイツ語で「稲妻が輝く」というネーミングが与えられた、STIが手掛けたBLITZEN(ブリッツエン)だ。ボディカラーにはイメージカラーのプレミアムレッドが用意され、3代目レガシイB4(2000年~)のセダンだけでなく、スバル自慢のツーリングワゴン(2001年~)にも設定。
なんとエクステリアにはポルシェが手掛けたポルシェデザインの専用前後バンパー、フロントグリル、リヤスポイラー、17インチアルミホイールが装着されるほか、ボンネットはアルミ製(軽量化)となり、MT車にはフロントヘリカルLSDを備えるなど、こだわり満載。EJ20型、280馬力、35.0kg-mを誇る水平対向エンジンのポルシェつながりもあり、4WD+5速MTによる低重心感覚溢れるスポーティな走行性能もあって、発売、即完売の人気和製ユーロモデルであった。