この記事をまとめると
■最近の新車は電動化やADASの装備によって高価となり若者には手が出しづらい
■海外製の「安くていいクルマ」に注目してみるとホンダやダチアの凄さに感心した
■いまどきは高機能なクルマが環境と安全に優しいと洗脳されているかもしれないが、すべてのユーザーが高機能を求めているわけではない
いい感じに装備と価格がバランスされたホンダWR-V
数年前と比べると、クルマはかなり高くなったと実感する。そのひとつの要因は電動化(軽カーもマイルドハイブリッドを搭載)と自動ブレーキや運転支援ADAS(ACCやLKAS)の装備にあり、そのコストだけもバカにならない。
また、コクピットもデジタル化が進み、さらにクラウドと繋がることで利便性が高まっている。新車のなかには生成AIやアバターが登場するモデルも市販されている。そこに半導体不足と円安が重なり、原材料のコストアップは避けられない。そんな状況なので若者はますます新車が買えない状況に追い込まれている。せめて税金だけも安くならないものかと思うこのごろ。
最近試乗したデリカミニ(4WDターボ)はADASも使いやすく、長距離ドライブも可能だ。だが、プライスリストを見ると250万円もするではないか。人気のホンダの軽カーN-BOXも高機能で高価格。安価なのはスズキ・アルトで100万円以下のモデルも存在するが機能は割り切っている。
ところで肝心のユーザーは、ハイスペックなクルマを欲しがっているのか疑問だ。なかには質素で実用的なクルマでいいと思っている人もいるだろう。そんなニーズに対応するモデルも出てきている。ここでは世界で売れている安価で実用的なクルマを紹介しよう。
■インド製ホンダ車は悪くない
ひと昔前は、本田技術研究所(栃木)の正面玄関を入ると、創業者のメッセージとして「良いクルマを廉価で」という社是が目に入った。オートバイから創業したホンダらしい社是だが、最近はどんどんと価格が高まっている。そこでホンダは創業者の意思を守るべく、安価でいいクルマ作りを実行した。誕生したのはインドで生産されるWR-Vだ。
大きさはヴェゼルと変わらなく、清々堂々としたSUV。FF(二輪駆動)しか用意されないが、ADASも装備され、機能的には十分だ。価格は200万円台前半と聞いて興味がわく。
さっそく広報車を借り出して500kmほどドライブしてきた。燃費は高速道路中心なら16km/Lほど走る。キャビンはルーミーで後席の足もとも広い。気になったのはタイヤのロードノイズ。だが、オーナーになったら遮音シートをホイールハウスに貼ったり、スポンジ入りタイヤ(ダンロップ)を履くことで、劇的にロードノイズを低減できる。WR-Vが静かになったら、長距離ドライブも楽ちんだ。
WR-Vはインドの工場で生産されるが、企画設計はタイホンダ。つまり、ASEANとインドの連携チームが担当した。日本ではわかりにくいが、ホンダのアジア戦略が明確に実ってきた証拠だ。余談だが、アコードはタイホンダで設計生産されるし、オデッセイは中国製だ。最近はベトナムの自動車メーカーも出てきて、新興国の活躍が目立っている。
クルマは「日本や欧米などの先進国製じゃなとダメ」というのは古い考えだ。米粒みたいに小さな国の日本は世界に進出することで産業が成長してきている。その意味では「メイド・イン・ジャパン」でなくても「メイド・バイ・ホンダ」なら、どの国でも同じ品質のクルマを作ることができるというわけだ。