この時代でも「粘土」が重要! ホンダのデザイナーが語るカーデザイン現場の「デジタル」と「アナログ」の協調 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■カーデザインの世界では現在、デジタルとクレイモデルを使いわけている

■アナログ的なクレイモデルは、気づける力を身につける教材的な役割も持つ

■ホンダのe-モビリティデザイン開発室の関係者に、クレイモデルの魅力を直撃した

カーデザインは最新とアナログの融合で成り立つ

 クルマのデザイン開発・検討において重要な役割を持つクレイモデル。制作に当たっては職人的な技術が必要とされていますが、いまや世の中はAIを筆頭としたデジタル技術真っ盛り。そんな時代にクレイモデルがもつ意義や意味はどこにあるのか? 今回はホンダのトップモデラーである神南氏にお話を聞いてみました。

●キースケッチのエッセンスをどう抽出するのか?

──では最初に。モデリングはデザイン開発に含まれますが、そのなかでクレイとデジタルモデルで担当はわかれているのでしょうか?

「基本的には開発効率を上げた開発を行うため、ひとりのモデラーが幅広く手掛ける方針です。とくにコロナ禍では在宅でデジタルモデルを制作する機会が増え、クレイ、デジタル両方のスキルを身に着ける必要性がありました。ただ、2年前の組織変更により、現在自分が担当しているe-モビリティデザイン開発室では、モデラー構成や機種開発状況などの理由から、担当を分けた推進と分けない推進が混在した体制で臨機応変に対応しています。オートモビルデザイン開発室では引き続き分業せず、開発効率を上げることのできるモデラーをより多く創出するよう取り組んでいます」

──なぜオートモビルデザイン開発室は分業化されていないのですか?

「昔と違い現在ではクレイ以外に可視化する手段が数多くあるため、目的に合わせてマルチにツールを使いわけることができるモデラーのほうがより開発貢献度が高いし、モデラーとしての『武器』や『価値』に繋がるんですね」

──なるほど。では、あらためて開発の流れをお聞きしますが、最初はエクステリアデザイナーが描いたスケッチのモデル化でしょうか?

「そうですね。まずはデジタルでモデル化、そこから2分の1や4分の1などのスケールモデルを起こし、ハンドワークでリファインして “測定→CG化→確認” を繰り返す。そして、デザイン(モデル)の方向性が定まった時点でフルスケールモデルを制作、商品化に向けて磨き上げます。ただ、コンセプトカーや先行開発車などでは、クレイは使わずにデジタルモデリングだけでモックアップを制作する場合もありますね」

──キースケッチをいきなりデジタル化するのはなかなか難しそうですね。

「キースケッチはそのクルマのコンセプトがしっかり反映された状態で可視化されていますが、お客さまに伝えたい魅力があえてデフォルメされているので、『伝えるべき魅力は何か?』を考え抜き、正しく抽出してモデルに反映することが大切なんですね」

──いわばキースケッチのエッセンスの見極めですが、具体的にはモデラー同士でディスカッションするイメージですか?

「もちろんディスカッションは行いますが、言葉だけで全員に同じイメージを共有することは難しく、モデラーのスキルやセンスによって異なってしまう。そのズレを常に修正しながら最終的な金型までもって行く流れですね」


すぎもと たかよし SUGIMOTO TAKAYOSHI

サラリーマン自動車ライター

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いすゞFFジェミニ4ドア・イルムシャー(1986年式)
趣味
オヤジバンド(ドラムやってます)/音楽鑑賞(ジャズ・フュージョンなど) /カフェ巡り/ドライブ
好きな有名人
筒井康隆 /三谷幸喜/永六輔/渡辺貞夫/矢野顕子/上原ひろみ

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