スーパーカーや高級車の事故報道のあとに溢れる「ヘタクソは小さいクルマ乗っとけよ!」の声! やっぱりデカイ高級車は運転が難しいのか? (2/2ページ)

ヤリスとノートとプロボックスバンが事故ってもニュースにならない

 高級車や高級スポーツカーの事故率が高いのか高くないのか、筆者は寡聞にして知らない。しかし、仮に「事故率が高い」としたならば、その主たる原因はボディサイズの大きさでは決してなく、主には「調子こいちゃったから」ではないかと推測する。

 高級車や高級スポーツカーは、調子にのりやすい。いやもちろん、公道では常に自制心をもって優雅かつ安全に運転してらっしゃる高級車ドライバーが多いことは、よく知っているつもりだ。

 しかし、それはそれとして、やはり生身の人間としては、たとえば撮影用に借りた高級スポーツカーを運転しているだけだというのに、なぜか知らねど「……自分は富裕層のパワーエリートだ。ふっ、庶民どもがやっすいクルマに一生懸命乗ってやがるぜ。ゴクローサン」的なマインドが、心の片隅のほうに(ほんの少しだが)湧いてしまうことを、100%否定することはできない。

 で、筆者の場合は「いかんいかん! 借り物を運転してるだけのくせに、オレはなぜ調子にのってるんだ?」と自らの右頬をぴしゃっと叩き、ごく普通の運転およびマインドへと自分を導いていく。

 しかし、この尊大なマインドが亢進して悪化してしまったとき──不幸にも高級スポーツカーというのはどえらい官能性と俊敏性、そしてウルトラなパワーとセクシーな排気音などによって、ドライバーを「調子こいた運転をする輩」へと変えてしまう場合がある。調子こいた運転をするテクニックと動体視力など、もち合わせていないというのに。

 そうなってしまった場合、まれに「テレビ報道級の事故」は起こるのだろう。

 だがこれも、本当のことをいえばレアケースだろうと思っている。高級スポーツカーにて調子ぶっこいた運転を公道上でしているドライバーの数は、もちろんゼロではないものの、さほど多くはないというのが筆者の印象だ。

 そして、まれにいる調子こいた糞ドライバーに遭遇すると、筆者も「……あいつ、この先で事故ればいいのに」などと思うわけだが(すみません)、あいにくというかなんというか、その先数十kmにわたって何の事故も発生していない──というのは日常茶飯事だ。

 ならばなぜ、編集部は「高級車やスーパーカーはボディサイズが大きい場合が多いから運転が難しく、そのせいで事故を起こしやすいのか?」などと推測するに至ったのか?

 これはもう単純に「バイアスの問題」だろう。

 例えば「東名高速◯◯IC付近で乗用車3台が追突し、現在炎上中!」みたいな事故が発生した場合、仮にその3台がヤリスとノートとプロボックスバンであったなら、テレビ局は現地へ撮影隊を送らず、ニュース原稿を読み上げるだけで終わらせることも多いはず。仮に撮影隊が送られたとしても、その映像を見た我々視聴者は「ひどい事故だな……。命に別状がなければいいし、自分も運転には気をつけなきゃな」と思い、5分後にはヤリスとノートとプロボックスバンのことは忘れてしまう。

 だが、その3台が仮にポルシェ911GT3とランボルギーニ・アヴェンタドールSVJとフェラーリ488ピスタであったなら──テレビ局はおそらく必ず撮影隊を派遣して現場の絵を押さえ、「現在、時価総額約3億円の高級スポーツカーが東名高速で炎上中です!」的なニュースを流すだろう。そしてそれを見た我々視聴者の脳裏にも、その光景は長く刻まれるだろう。

 これはそのようなバイアスの問題であるため、もしも本当にネット上に「ヘタクソは高級スポーツカーじゃなくて、もっと小さいクルマに乗れよ」的な声が多数あがっているのだとしたら、いうべきは「もっと小さいクルマに乗れよ」ではないはずだ。

 基本的には「事故の真相などわからないのだから、外野は何もいうべきではない」というのが正解だが、もしもどうしても何かをいいたいなら、以下のようにいうべきだろう。

「下手クソは調子にのらねぇで、もっと慎重に運転しとけよ!」と。


伊達軍曹 DATE GUNSO

自動車ライター

愛車
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絵画制作
好きな有名人
町田 康

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