クアドリフォリオが護符になった理由
シヴォッチはそのレースで見事総合優勝を遂げ、四つ葉のクローバーのご利益というか評判は大いに高まった。しかし、タルガ・フローリオからわずか数カ月後、ウーゴ・シヴォッチはレースの予選中に事故死してしまう。そして、その際に彼が乗っていたマシンには──たまたまだったのか、「クアドリフォリオ」は描かれていなかった。
それ以降、レースに参加するすべてのアルファロメオ製ワークスマシンには、護符として「四つ葉のクローバー」が描かれることになった。ただ、それまでの白いベース部分は正方形だったのだが、このタイミングから「シヴォッチが欠けてしまったこと」を意味する三角形に変更されている。
その後、クアドリフォリオ ヴェルデ(緑の四つ葉のクローバー)をノーズやコクピットなどに描いたアルファロメオのワークスマシンは勝利を重ねていくことになるが、1960年代からは、レース参戦のために作られるホモロゲーションモデルにも四つ葉のクローバーが描かれた。そして1980年代以降は、市販モデルの最高峰グレードにも「クアドリフォリオ」という名称が使われるようになる。
現在販売されているモデルでいうと、スポーツセダンの「ジュリア」と、スポーティなSUVである「ステルヴィオ」に、クアドリフォリオが存在している。
ジュリアの場合、標準モデルである「ジュリア ヴェローチェ」は最高出力280馬力の2リッター直4ターボエンジンを搭載するが、「ジュリア クアドリフォリオ」のそれは同510馬力の2.9リッターV6ツインターボ。車両価格も前者は697万円だが、クアドリフォリオはほぼ2倍の1357万円だ。
そしてステルヴィオでは、標準モデルに相当する「ステルヴィオ TI」が最高出力210馬力の2.1リッター直4ディーゼルターボであるのに対し、「ステルヴィオ クアドリフォリオ」は、ジュリア クアドリフォリオと同じ510馬力の2.9リッターV6ツインターボを搭載。こちらの車両価格も、標準モデルの2倍近くである。
現在は主に市販モデルにおいて使われている「四つ葉のクローバー印」ではあるが、その可愛らしさに騙されてはいけない、というか惑わされてはいけない。あの可愛いマークは、約100年前にシチリア島でウーゴ・シヴォッチが勝利したときから連綿と続く「勝利への護符」なのだ。