日本でもドアロックは防犯装備という認識を持っていたい
1980年代末に初めてアメリカを訪れたとき、当時はリモコンキーも普及していなかった。日本車は「インロック(とじ込み/車内にカギがあるままドアロックしてしまうこと)」を防ぐために、ドアハンドルをドアが開くように持ちながら閉めないとカギを使わずにロックすることができなかったが、アメリカ車はロックしてドアをそのまま閉めると施錠してしまうことに驚いた。筆者は日本国内にてアメリカ車に乗ったときにたびたび「インロック」をやらかしたことがある。
アメリカ車というかアメリカで販売されている日本車も含めて特徴的なのは、ワンアクションでは運転席のみしか解錠しないこと。これは、カージャックなどの犯罪は、クルマへの乗降時に遭う確率が高いことがある。たとえばひとりしかいないのに、全部のドアが一斉に解錠してしまうと、助手席や後席に犯罪者が乗り込んできてしまうので、それを防ぐ意味がある。
そのため、セカンドアクションで全部のドアが解錠されるようになっている。とくに夜間では、犯罪者は遠くから駐車場の様子を見ており、乗降時に隙あらば強盗などの犯罪を行うのである。そのため、広い駐車場を持つショッピングモールでも、夜間はたとえばスーパーの入口など、明るくて人の出入りのある場所に集中してクルマが停まっていることも多い。
また、日本車では採用の少ない車速感応型ドアロックもアメリカ車では採用が当たり前となっている。これも、何ごともなくクルマを発進させてドアロックをしないまま走り続けると、信号待ちなどのときに犯罪者がドアを開けようとしてくることがある。それを防ぐためにも、確実にドアロックさせるための装備といえよう。
アメリカでは助手席側にも集中ドアロックの操作スイッチがあるのも特徴。これもドライバーがクルマを離れたときに、助手席に残された同乗者がドアの施錠ができるようにという配慮と考えられる。かつて「日本車キラー」として話題となったクライスラー・ネオン(アメリカではダッジもしくはプリマス・ネオンの両方が用意されていた)では、カラードバンパーでもなかった“SE”という廉価グレードがあった。パワーウインドウも未装備だったのだが、集中ドアロックは装備されていた。防犯装備として需要の多い集中ドアロックのほうが優先採用されていたのである。
※写真は北米仕様のダッジ・ネオン
ここ数年、日本も急速に治安が悪くなってきている。煽り運転をはじめ交通トラブルもなかなか減らない状況が続いており、運転中に犯罪に遭うケースも増えているように感じている。
日本でも、ドアロックを「防犯装備」として強く意識し、アメリカのようなドアロックシステムに統一しても良いのではないかと筆者は考えている(ただし、事故などでドアロックが解除できないといったことに備え、車内にガラスを割るハンマーなどの標準装備が必要かもしれない)。