この記事をまとめると
■トラックの事故が報道されるたびに衝突被害軽減ブレーキを義務化すべきという声があがる
■大型トラックへの衝突被害軽減ブレーキの義務化は2014年から始まっている
■義務化以降も大型トラックの追突事故がなくならない理由を解説
衝突被害軽減ブレーキ装備でも追突事故は起こる?
2024年に入り、年頭から大型トラックが絡む交通事故がいくつも報道された。ネットに寄せられるコメントを見ると「大型トラックこそ自動ブレーキを義務化すべき!」といった意見が多い。乗用車ユーザーはトラックに乗らないから、気がつかないだけなのだろうが、じつは大型トラック・バスへの衝突被害軽減ブレーキの義務化は2014年から始まっており、生産過程車についてもすでに全車搭載が義務化されている。
さらに、歩行者を検知する機能など、より高度な衝突被害軽減ブレーキの義務化も2025年から施行される。
10年前に搭載が義務化されているのになぜ追突事故が起こるのか、不思議に思う読者もおられるだろう。
それにはさまざまな理由がある。
ひとつは衝突被害軽減ブレーキという名称が示しているとおり、被害の軽減はできても完全に衝突を防止する装置ではない、ということだ。前方の障害物などを検知してブレーキを作動させるが、障害物の前で停止できるとは限らない。それでもブレーキを作動させたことで、衝突による損傷は抑えることができるのだ。
とくにトラックは積載物によって制動距離が伸びるから、乗用車のように短い制動距離では止まれない。バスは乗員のケガを防ぐために、急制動でもそれほど強いブレーキはかけないよう制御されているので、やはり制動距離は長めになる。また、条件によっては障害物の検知が遅れたり、検知できなくて作動しないケースもある。
トラック車両は長い寿命により、まだ衝突被害軽減ブレーキが搭載されていない旧式トラックがたくさん走っていることも、追突事故がなくならない原因だろう。精密機器などを運ぶトラックは、積荷を守るためにあえて衝突被害軽減ブレーキが作動しないようキャンセルさせているところもあるようだ。それと、ドライバーが衝突回避行動をとったために作動がキャンセルされて、制動力が不足して衝突してしまうケースも考えられる。
かつてエアバッグシステムの普及によって乗員の安全性が高まった際にも、ドライバーの過信により運転が雑になった傾向がみられた。衝突被害軽減ブレーキも普及が進むにつれ、クルマの装備を過信して運転中に脇見や別のことをしてしまうケースもあるようだ。
そこでドライブレコーダーで車内の様子も記録しようとしたところ、トラックドライバーから反対の声が上がった、という話も聞く。プライバシーの侵害ということなのだろうが、業務中の運転操作を記録するのはそれほど問題がある行為には思えない。
なかには「(運転中に)漫画が読めなくなる」とうっかり日頃の運転事情をバラしてしまった不届なトラックドライバーもいるらしい。そんなトラックドライバーだから衝突事故を起こすのだと、誰もが思うことだろう。
衝突被害軽減ブレーキが歩行者を検知するようになっても、トラックドライバーには油断せず高齢ドライバーや自転車の危険な運転行為、歩行者の傍若無人ぶりから交通事故を防ぐ運転をしてもらいたいものだ。