この記事をまとめると
■軽油とは重油と区別するために付けられた名称だ
■おもにディーゼルエンジンの燃料として使われる
■軽油とは何か、ガソリンとの違いについて解説
ディーゼルエンジンは燃料の自由度が高い
軽自動車に軽油を入れる誤給油が毎年一定数発生しているが、そもそも軽油とは何か、理解している人は意外と少ない。軽油とは重油と区別するために付けられた名称であり、このふたつはおもにディーゼルエンジンの燃料として使われるために分類された石油から精製されたものだ。
ガソリンも同様に石油から精製されたもので、軽油よりもさらに軽質な揮発油というだけでなく、じつはかなり特性が異なる。
軽油や重油は自己着火性が高く、ディーゼルエンジンとの相性がいい。空気を圧縮して燃焼室内の温度を上昇させ&燃料を噴射させ、自己着火させるという仕組みだ。自己着火する燃料ならば、石油由来でなくても利用できるディーゼルエンジンは、燃料の自由度が高いエンジンだ。現在のトラック用のディーゼルエンジンは軽油仕様に最適化されたもの、ということなのである。
たとえば、大型船舶用のディーゼルエンジンはトラック用より回転数が低いから、ゆっくりと燃える重油を燃料としている。こうしてエンジンの特性に合わせて燃料を利用しているのだが、ガソリンエンジンと比べると、ディーゼルエンジンは空気をたくさん圧縮した状態にして燃料を噴射し、その燃焼エネルギーだけでなく、その燃焼によって発生した熱を残った空気を膨張させることにも利用できる。だからディーゼルエンジンはガソリンエンジンより熱効率が高いというわけだ。
一方、ガソリンエンジンは火花点火機関とも呼ばれ、圧縮した混合気に火花で着火して燃焼させる。この仕組みでは自己着火性よりも、引火性の高い燃料のほうが相性はいい。石油を蒸留して作り出された燃料のなかでもガソリンは揮発性が高く、引火点はマイナス40℃以下といわれており、空気と混ざって気化するとわずかな火気でも燃焼する。
ただし、ノッキング(異常燃焼)を防止するためにも混合気の圧縮は11対1から12対1程度までに留められているから、1回の燃焼によって生み出される力(トルク)はディーゼルエンジンよりも低くなってしまう。だからガソリンエンジンではエンジン回転数を高めて、同じ時間内に燃焼回数を増やすことでパワー(仕事量)を稼いでいるのだ。
ただし、ガソリンエンジンは基本的に燃焼室内の混合気をすべて燃やすことが基本となる。リーンバーンは理論空燃比(14.7:1=空気と燃料の混合比率で完全燃焼の値)よりも薄い混合気を燃焼させるものだが、通常のガソリンエンジンであれば、1〜2割薄い混合気を燃やすのがせいぜいで、それも一定回転の巡行や緩加速程度の領域までの話だ。
ディーゼルエンジンは燃やしたい燃料を噴射するだけなので、負荷に応じて燃料の増減が可能だ。ただし、大きな力が必要なときにはたくさんの燃料を噴射するが、全部がキレイに燃え切らなければ煤が発生してしまう。これが黒煙となってしまうのだが、DPF(ディーゼルパティキュレートフィルター=黒煙を回収するフィルター)によってキャッチして再燃焼させることで、クリーンな排気ガスを実現しているのである。