悪路走破性の高さを極限的に引き出したクルマの魅力
次に新型の250に試乗する。250は300よりもひとまわり小さく感じるが、スクエアな車体デザインがより見切りをよくしていて走りやすそうだ。
エンジンは2.8リッターの直列4気筒ディーゼルターボエンジンで、8速のオートマチックトランスミッションを備えている。
センターデフは300系と同様にトルセンのLSDを内蔵するフルタイム4WD機構だ。さらにリヤデファレンシャルをロックすることができる。
走り始めて感じるのは、遮音性に関しては300系より若干ノイジーに感じられるが、それは車外の音をある程度聞かせることによって、クルマの置かれている状況を正確に把握するために必要なことだと思える。たとえば泥寧路面で巻き上げた泥がボディに当たる音、道路の両サイドから飛び出た木々や枝葉が車体をこする音などが間近に感じられ、自然と一体感を感じることができるような印象を受けた。
もちろん、走破性においてはこうした路面でもまったく苦もなく走り切ることができていて、300系に勝るとも劣らない走破力を持っていることを確認することができた。
新開発の電動パワーステアリングは、非常にぬかるんだ深い轍路で最大角まで操舵しても 十分なアシスト力を発揮してくれて不安がない。また、軽すぎず重すぎずといった頃合いのいい操・保舵力で、森津チーフエンジニアが走り込んで納得したうえでの乗り味を提供してくれているのだ。
次に70系に乗り換えてみる。 70系の車体外観デザインは登場初期の1970年代と変わっていない。実際、ボディの外板パネルやラダーフレームなどは2004年まで生産されていた70シリーズの型をそのまま採用しているという。メーターやシート、内装材に至るままですべてが同じものを継続して生産しているものなのだ。そのレトロ感が非常に可愛らしく見え、また懐かしさも感じさせるのである。
唯一、ボンネットはフードが高い位置に持ち上げられているが、これは歩行者保護の観点からエンジンとの隙間を十分に確保するのが狙いであり、その部分だけが新造されたものだという。
クルマに乗り込むと、昭和のクルマを思い出すような懐かしい気持ちさえする。
トランスミッションは6速ATで、パワーステアリングはボール&ナットの油圧式アシスト。そしてパーキングブレーキはレバーを引くハンドブレーキが採用されている。視界に入るAピラーやルーフなどの作りは非常に細く、また簡潔な作り。
70にはヘッドまわりのエアバッグは仕込まれていない。ステアリングと助手席の正面にあるエアバッグのみで、プリテンショナーのシートベルトももたない。すべてが昭和のものを継承しているといえるのである。
また、ホイールは 5穴が採用されているが、フロントホイールハブにはオートとマニュアルでロックする機能が備わっているのも、いまでは懐かしく感じられるアイテムといえる。エンジンをかけるとディーゼル特有のガラガラ音が聞こえてくるが、そうした遮音性や、また振動などもあえて当時のままを引き継いでいるのである。
走り始めるとステアリングの操舵力は重く、その割にギヤ比はかなりスローとなっていて、最新のモデルであればロックtoロックまで2回転弱なところが、しっかりと2回転以上切り込んでいかなければならないような感じである。また、リヤサスペンションはリジッドアクスルにリーフスプリングを採用している点も時代を感じさせるものだ。
これまでは1ナンバー登録とされていたが、今回のモデルからは3ナンバーの乗用車登録ができ、リーフスプリングがゆえに乗り心地は硬いのだが、サスペンションの動き自体は非常にスムースで、むしろこうした悪路においてのほうが乗り心地よく感じられる。
70系の4輪駆動システムは、トランスファーギヤを操作することによって前後アクスル直結の4輪駆動となる。通常はフロントエンジン・リヤ駆動の2輪駆動である。今回のような悪路では4Lモードがちょうどいいということで走り始めた。
タイトターンでは当然ブレーキング現象が発生するが、それでもアクセルを踏み込みトルクを与えることによって、ほかの最新モデルと同様にこの悪路を難なくクリアしていく。ABSやトラクションコントロールなどは最新のものが備わっていて、クロールコントロールこそもたないが、悪路の走破力という意味では十分な性能が与えられている。
今回試乗したモデルはいずれもノーマルの標準タイヤを装着していて、とくにマッドテレイン系の無骨なタイヤではなく、オンロードでの快適性も得られる乗用車用のタイヤを装備してのことだから、なおさらクルマとしての高い走行性能が認められるわけだ。
次にステージを変えて左右高低差の大きなモーグル路、そして岩場の登坂を試してみる。300系はやはりここでも快適で、また音も静かで制御も高度であって、おそらくこうした人工的な悪路コースは何の問題もなく走破していくことができる優れた性能が改めて確認できた。
新型の250も同様であり、モーグル路ではスタビライザーのコネクションが緩められてアーティキュレーションが大きく取られていることがわかる。試しにあえて一輪を浮かせてスタック状態を再現してみるが、アクセルを踏めば直ちに駆動力が発揮され立ち往生させることすら難しいといえる。
スタビライザーのディスコネクションメカニズムはこうした悪路では重要な装備といえ、その作動もドライバーがスイッチ操作で簡単に行えるので実用性が高い。
岩石路においてはいずれも高い最低地上高があり、安心して走り込んでいけることがわかる。おそらくこうした専用のコースでなく、真の自然界においてこのような岩石の敷き詰まった路面に出くわしたら走り入ることは絶対に避けるだろうが、あえてこのコースで性能を試す意味で乗り入れてみると、ミシリともいわない車体やフレームの強靭さ、そして泥が付着し滑りやすくなっているツルツルの石の表面を、ブレーキを4輪個別につまみながら、必死にトラクションを引き出そうとして制御が頑張っている部分なども頼もしく感じられるのである。
ドライバーがドライブモードを適切に管理し、またセンターデフロックのみならず、リヤデフをロックすれば簡単にクリアできてしまうのだが、クロールコントロールを使うことで自動的に車速を1km/hから5km/hの範囲で調整し上っていくことができるのは素晴らしい。デフロックしなくてもブレーキが最大限に空転車輪をつかみ、それを前後4輪で常に行い、また駆動力自体も十分なトルクがトランスミッションを介して伝えられるので、急激に勾配が変化する区間もハンドルに集中して登り切ることができた。
最後に、70でこの同じ路面を走ってみるが、やはりリジッドアクスルとリーフスプリングにより、リヤのアーティキュレーションはある程度制限され、一輪が浮き上がる場面もある。しかし、センタートランスファーが直結されていれば、ほかの三輪が必ず駆動力を伝えてくれるので立ち往生することはない。
岩場においてもスムースなサスペンションのストローク感はないが、ごつごつとした乗り味を楽しみながら、高性能な他の300系、新型250モデルと同様に難コースを走破することが可能だった。
こうして3台がいずれも1度も立ち往生することなく、まるで自分の庭でもあるかのようにこの悪路走行を可能としたことで、走破性の優秀さを確認することができたといえる。このレベルの悪路は、ランドクルーザー群にとっては特別な道ではなく、むしろいつもの生活道路であるといっても過言ではない。
悪路で、また砂漠や雪道など一般の人の生活場面からは想像もできないような道で培ってきた走破性を備えるランドクルーザー群。サーキットをレーシングカーのようなスピードで走るスポーツカーも魅力だが、一方でこうした悪路走破性の高さを極限的に引き出せるクルマの魅力もいま大いに高まっている。