4バルブのほうが効率的なので5バルブは淘汰された
一方、5バルブになると燃焼室の形状が悪くなる懸念がある。燃焼室内にバルブの数だけ凹凸が増え、ことにバルブ数が奇数になると燃焼室形状がよりいびつになりやすい。
それでも、燃費を気にしなければ空気量を多くできるほど馬力を上げることができ、高性能エンジンと謳いやすくなる。しかし、欧州での二酸化炭素(CO2)排出量規制の数字を明示して処罰の対象になってくると、燃費を改善することがエンジン開発では第一に求められる。その実現には、形の整った燃焼室により、供給した燃料を完全に燃やしきることが優先される。それには、4バルブが適している。
また、燃費向上のため直噴エンジンが増え、燃焼室の頭頂部に点火プラグに加え燃料噴射ノズルを設ける必要があり、バルブ数を増やす余地が限られてくる。そこには、ピストンストロークを長く、ボアを(燃焼室)を小さくする完全燃焼の狙いからも、場所取りが難しくなる。
燃費を悪化させる損失という視点では、部品点数が増えるほど摩擦が増える要因となりやすい。バルブ数を多くして吸気量を増やしながら、部品点数を減らして摩擦損失を軽減するというふたつの要件を満たす丁度よい調和がとれるのが、4バルブといえるだろう。
4バルブと低圧過給により総排気量を減らす、いわゆるダウンサイジングターボエンジンが21世紀初頭に広がったのは、効率を追求しながら、適切な馬力を得る妥協点として、エンジン開発が行われたからである。