NISMOグレードには高齢者が多いという都市伝説
スイフトにMTが設定されているメインの理由は、「MTを求めるユーザーが存在する」からにほかならない。じつはスズキのラインアップを見ていると、軽自動車のワゴンRにもエントリーグレードのみMT車が用意されていたりする。
これは、いずれも同じユーザーニーズに応えるためのグレードといえる。メインターゲットは「ATは不慣れで乗りたくないというまま歳を重ねてきたベテランドライバー」だ。けっして多数派ではないが、「ATだと暴走しそうで怖い」というユーザーは一定数存在している。
そうしたドライバーからはMT車へのニーズがあり、そのためにスズキとしては軽乗用車ではワゴンR、登録車ではスイフトにMTを設定している部分もあるのだという。
そんなMT至上主義のドライバーというのは、主に高齢者層に多い。自ずとクルマにハイパフォーマンスを求めるわけではないため、スイフトのような実用車にMTを設定する意味は大きい。
同様のニーズから、過去には日産がマーチやノートに設定したスポーティグレード「NISMO S」が、なぜか高齢ドライバーに売れていたという話もある。熱心な日産派のオールドファンからは、「これしか選択肢がない」といわしめたという都市伝説も存在しているほどだ。なぜならNISMO Sは1.6リッターエンジンと5速MTを組み合わせたパワートレインを積んでいたからだ。
たしかに日本の自動車市場においては、クラッチペダルのないAT車が圧倒的なシェアを持っている。しかし、ごく一部ATに不慣れなドライバーが存在しているのであれば、そうしたニーズに応えるのが多様性の時代にふさわしい商品企画であり、まさに、スズキはユーザーファーストの商品企画を進めているメーカーであるといえよう。