意外にもカーブが続く一般道での運転が楽しい
そんな空間を存分に後席で堪能する前に、新型LMは想像以上に運転が楽しめるクルマでもあったことを報告しておこう。パワートレインは2.4リッター直列4気筒ターボエンジン+6速ATに、モーターを一体化したフロントユニット、高出力モーター「eAxle」をリヤに組み合わせたハイブリッドで、シーンに応じて緻密な四輪駆動制御を行う「DIRECT4」を採用している。
レクサスのコクピット思想「Tazuna Concept」を継承した運転席に座ると、水平基調のインパネは思いのほかシンプルな配置で、手や肌が触れるところはしっとりと上質。視線が遠くまで届くアイポイントながら、必要以上にボディの大きさは感じさせず、車両感覚の掴みやすさがあると感じた。
アクセルペダルに力を込めていけば、発進からトルクフルで思いどおりに加速がはじまる。落ち着きはあるがもたつくような挙動はまったくなく、加速と減速のコントロールもしやすい。その気になればグイグイとした力強い加速フィールも発するが、クルージングに入るとシッカリとした安定感が続き、リラックスして走ることができた。
予想に反して爽快だったのは、カーブが続く一般道。ステアリングには適度な手応えがあり、軽々しく切りすぎたり切り遅れたりする違和感がないから、いつしか5m超のボディを操っているというよりは、ぎゅっとした塊感のほうが強くなってくる。後輪が遅れてついてくるような感覚がないのも、車輪速センサー、加速度センサー、舵角センサーなどの情報をもとに、前後輪の駆動力配分比を100:0〜20:80の間で走行状態に合わせた適切な制御を行うからだろう。
さらに、前後独立油圧制御により前後回生協調が可能な加圧ユニットを採用した、ブレーキフィーリングの自然さと扱いやすさも、こうした巨体には不向きと思われるシーンで運転の楽しさと安心感を感じさせる理由ではないかと思った。
さて、いよいよスライドドアを開け、後席へ。瞬時にせり出してくるステップに足をかけ、ドーンとゴージャスなシートに身体を預けてみる。ふっくらと受け止める座面と背もたれのクッション、あえて弓形にして腕にフィットさせているアームレスト。電動操作でオットマンを出し、リクライニングさせればフワーっと全身のチカラが抜けていくように解放される。
アームレスト内側には脱着可能なタッチ式コントローラーがあり、シート調整や空調、オーディオ、照明やサンシェードなどの操作が可能。リラクゼーション機能も数種あり、試してみるとポコポコと背面が押されていい感じだ。
そして、目の前には、前席とを隔てるパーティションを兼ねた、48インチ大型ワイドディスプレイがある。映画鑑賞やビジネスミーティングなどさまざまな用途に対応できるよう、横長1画面、左右2画面、センター1画面と切り替えて使える。その下には、750mlのシャンパンが3本収納可能という冷蔵庫や、大きな収納スペース、傘立ても完備。
また、パーティション上部中央には、乗員と周辺温度を検知する「温熱感IRマトリクスセンサー」があり、エアコンやシートヒーターなどを一括コントロールして快適に保つほか、エアコン、シートポジション、サンシェード、照明などを統合制御する「リヤクライメイトコンシェルジュ」をレクサス初採用。Dream、Relax、Focusといったプリセットモードと好みでカスタマイズできるモードがあり、気分やシーンによって室内空間までが思いどおりになるという、未来を感じさせる機能に驚いた。
パーティションのガラスは手元のスイッチで開閉でき、閉めれば前席からの声は聞こえない。誰にも邪魔されず、手足をのばしてリラクゼーションを受けながら好きな動画など見ていたら、取材中ということも忘れてうっかり寝落ちしそうになっていた。
もちろん、振動やノイズが皆無というわけではないが、とてもゆったりと過ごせる空間であることは間違いない。内外装の豪華さや素材の良さといった、見た目だけで判断するラグジュアリーとは一線を画す、とことんまで突き詰めた静粛性と快適性こそがラグジュアリーだという価値観。新型LMはそれを実感させてくれる珠玉の1台だった。