地名をローマ字にするだけでは問題解決にならない
行先表示については、あくまでベースが日本語地名なので、これをローマ字表記にしてさらに日本語表示より大きくしても、インバウンドにとってはわかりにくいことには変わらないだろう。タイでも自国語表記に加えアルファベット表記もされているが、そもそも自国地名すらよくわからないので、わかりにくいことには変わりない印象を受けた。
少し話が違うが、タクシーの助手席側ダッシュボード上に、「空車」などを表示する「スーパーサイン」がおかれているが、最近は日本語のほかに英語も併記するものもある。しかし、道路わきからでは、文字ではなく色(空車だと文字が赤く表示される)でしか判断できない(都内なら屋根の行灯が消えていれば実車中なので見分けがつく)。
インバウンドの利便性を意識したのかもしれないが、日本語表記が小さくなってしまったので、日本人にも少々わかりにくくなってしまっている。
道路標識についても、インバウンドの利便性を考慮して図柄や形状、表記などを変えれば慣れ親しんでいる日本人には混乱を与えかねないだろう。だいたい、道路を走っているクルマのなかでは日本人が運転しているものが圧倒的に多いはずである。
ただ、外国人労働者を受けいれるための「特定技能制度」の対象に、バスやタクシー運転手も追加されるようなので、「外国人にわかりやすい」道路標識が、今後は本格的に導入されることになるかもしれない。
海外旅行の際、行き先地域のガイドブックなどを購入して事前に情報収集するのは、筆者のようなオジサン世代だけなのだろうか。
いまはスマホを使えばリアルタイムで情報収集できるので、あらかじめ行き先地域の情報収集をする必要はないが、それでも日本で観光しているインバウンドを見ていると、観光地や飲食店などのスポット情報は別としても、どういう国でどんな人が住んでいるのかなどにはあまり興味がないような人が目立つと思うのは筆者だけだろうか。
他国にきて「標識が見にくい」というのはそのとおりだと思うが、「どうしようか」とすぐに対応を検討してしまう行政当局もいかがなものかと思ってしまう。