国産EVのラインアップ拡充に期待したい
ただし、国内におけるサービスネットワークが算定基準になるのならば、外資ブランドだけではなく、国内からも新興BEVメーカーというものがより出現しにくい状況になったといえよう。
アメリカや中国では新興の、いまどきの表現ではスタートアップ企業的なBEVメーカーが台頭してきている。規模は異なるが、そもそもテスラやBYDも新興自動車メーカーといえるだろう。
算定においてはサービスネットワークのほかにも基準を用意しているとはいうものの、やはり国内サービスネットワーク体制というのは新興勢力にとってはまさに「これから」という状況なので足かせとしては大きいだろう。
そもそもCEV補助金は、新規登録終了後にオーナー本人が事後申請して交付を受けるものなので、新車購入時点で補助金分を差し引いて支払い総額が算出されるというものではない。そのため、販売現場では「BEV買ったら国からボーナスをもらったという感覚でいて欲しい」との話はよく聞く。
たとえば85万円の補助金がもらえるとしても、購入時にはその85万円も用意しなければならない。ローンならば補助金の85万円を差し引いて支払いプランを組むことはできないのである。
こうなると、「補助金がもらえるから」といって価格の高い高級ブランドのBEVを背伸びして購入するということもなかなかできないようにも見える。
中国ではすでに補助金は終了となっているし、BEV普及に前向きな欧州各国でも補助金減額の動きが目立っている。欧州あたりは政府の懐具合も影響しているようだし、「マジトラ(マジでトランプ氏が大統領になる)」ともいわれている、2024年11月のアメリカ大統領選挙では、トランプ候補はすでに自身が大統領となったら現状のアメリカのBEV普及政策を大幅に見直しするとしている。
BEV普及度合いといった話よりは、むしろ各国の政治的背景に基づき補助金の廃止や減額が行われているのは気になるところだが、今回の日本政府の動きでも、増税傾向に歯止めがきかない現状を見れば政府の懐具合も多分に影響していることは否定できないだろう(実際に懐具合はそれほど悪くないとの話もあるが……)。
自国自動車メーカーが世界的に高い評価を受け、世界的によく売れており、国の重要基幹産業なのだから自国CEVを積極購入してもらおうという動きを批判するつもりはない。ただ、そこで気になるのは選択肢があまりにも少ないというところ。
次年度の補助金では日本メーカー有利にも見えるものとなったのだから、今後は日本メーカーからも積極的にBEVがラインアップしてくるものと期待している。
BEVを買うかどうかはあくまで個人の自由であり、いままで2030年代にICE(内燃機関)車を販売禁止にするとしていた国も軒並み軌道修正しているので、短期的にすべてBEVにしろというのも無理のある話(必要性があるのかというものも含め)。
しかし、世界的にBEVの存在が認知され一定の需要が見込めるのも明らか。世界的にも「日本メーカーの展開するBEVはどういうものなのか」と注目が高まっているともいっていいだろう。あとは日本メーカーがどのような演者をしたがえてどんな舞台をみせてくれるのか、大いに期待したい。