「低く、薄く、長くワイド」である
言いたいことがしっかり見えるデザインを目指す
──今回は「低く、薄く、長くワイド」をテーマにしています。最近は厚いボディに薄いキャビンが主流ですが、なぜそこまで「薄さ」にこだわったのでしょう?
「そこはホンダらしさでしょうか。1980年代のホンダ車はグラッシーなキャビンが特徴でしたが、基本はそれを引き継いでいる。ボディを厚くするとタイヤも大きくするなどクルマ全体が肥大してしまい、ランニングコストもかかってしまうんですね。また、薄さは視界の良さを重視した結果でもあるんです」。
──フロントグリルは繊細というか、構成パーツが薄く、折り紙のようなイメージが新鮮です
「はい。これはノイズを減らしてツルンとしたボディにすることと、ローアンドワイドを強調するためにシャープな造形を目指したものですね。先代は縦長のグリルでしたが、ここでも薄さを出したかった。これはリヤも同じで、ブラックのガーニッシュのなかにグラフィック類を収め、凹凸を極力なくしています」。
──ボディサイドではシンプルな面の張りが特徴的で、先代とはかなり表情が異なりますね
「先代のキャラクターラインは面を一度大きく引っ込めてから張り出したもので、非常にグラマラスな表現でした。新型は最近のホンダ車に沿い、ボディ全体をひとつのカタマリに見せるためにより繊細な表情とした。ここはモデラーの力が発揮された部分ですね」。
──しかし、こうしたシンプルな面に対しては専門家からも「ノッペリしている」「もの足りない」といった声が聞かれますが……。
「そうですね(笑)。全員に理解してもらうのは難しいのですが、ちゃんとわかってくれる人はいるだろうと……。私たちとしては、骨格のよさを前提にホンダらしいスポーティさ、ダイナミックさ、エレガントさなどを愚直にやることが大切だと思ってデザイン開発を行っています」。
──では最後に。前の質問にも関連しますが、今回の新型を手がけ、美しさとシンプルさを兼ね備えたデザインには何が必要だと感じられましたか?
「足し算のデザインは簡単ですが、やはり引き算は難しいですね。これは個人的な考えですが、シンプルとは何もないことではなく「洗練」だと思っています。いい方を変えれば一貫性を持つということで、「いいたいことが見えている」のが重要です。それには熟成が必須で、いろいろな雑音が聞こえても、そこまでグッと我慢することが大切なんですね」。
──意図が明快に見えるというのは重要ですね。本日はありがとうございました。